北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[令和元年度新発生病害虫]
トマトの炭疽病(病原の追加)
平成27年9月、花・野菜技術センター(滝川市)場内の露地栽培加工用トマト(品種:「なつのしゅん」)の成熟果実に腐敗症状が発生した。平成28年には沼田町および恵庭市の農家ほ場でも同様の症状が確認された。発病果は、はじめ果実表面に直径数㎜~1cmの押し傷に似た円形のへこみを生じ、次第に拡大して黄~褐色を呈し、褐色の剛毛を伴う小黒点状の菌核および分生子層が多数生じた。病斑部からは単一の糸状菌が高率に分離され、分離菌をトマト果実に接種すると原病徴が再現され、接種菌が再分離された。分離菌のPDA培地上の菌叢は白色の気中菌糸がわずかに生じ、小型の黒色菌核が多数生じた。分生子は無色、単細胞、長楕円形~両端の丸い円筒形、SNA培地上の大きさは16.3~23.3 × 3.8~5.4μm、付着器は褐色、楕円形~長こん棒形、全縁または深い切れ込みがあり、大きさは8.2~20.5 × 3.8~13.1μmであった。以上の分離菌の形態的特徴と、rDNA-ITS領域、HIS3遺伝子およびTUB2遺伝子による分子系統解析の結果から、分離菌をColletotrichum nigrum Ellis & Halsted、本病をトマト炭疽病と同定した。トマト炭疽病の病原菌として、国内ではC. gloeosporioidesおよびC. acutatumの記載があるが、C. nigrumによる本病の発生は国内初である。
(花野セ・道南農試・農研機構遺伝資源センター)
トマトの炭疽病 (白井 原図)
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