北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[令和元年度新発生病害虫]
とうきのハイイロオオササベリガ(新寄主)
平成27年8月と令和元年8月に恵庭市のとうき採種ほ場、令和元年7月に滝川市のとうき採種ほ場において、鱗翅目幼虫が花序上の子実側面に径1mm程度の穴を開けて内部を食害する被害が発生した。終齢幼虫の体長は5-6mm程度の小型のイモムシで、頭部は黒色、体色は淡黄色で、刺毛基部は顕著な黒点となる。加害幼虫の飼育により得られた羽化成虫は、交尾器の形態から、鹿児島大学の坂巻祥孝博士によりハイイロオオササベリガEpermenia strictella (Wocke)と同定された。成虫は開張11-17mm程度の小型の蛾で、灰白色地に灰黒色の鱗紛を散らして斑紋は変異に富む。なお、前翅後縁には4個の鱗片総を伴い、この鱗片総は翅をたたんで静止した状態で正中線上に突出して見える。採種ほ場で発生すると花序上の子実が食害されるため種子の収穫量は減少するものの、通常の栽培で収穫物となる根は加害しないため一般ほ場で発生しても影響はない。寄生植物はヨーロッパや北アフリカでいずれもセリ科のFerula属、Laserpitium属が知られており、令和元年7月の滝川市における発生事例では、ほ場周辺のノラニンジンへの寄生も確認された。平成27年の発生事例では、被害発生ほ場から得られた幼虫の多くはコマユバチ類の寄生により死亡した。
(十勝農試・中央農試・花野セ)
とうきのハイイロオオササベリガ幼虫と被害 (岩崎 原図)
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