北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成30年度新発生病害虫]


カーランツのブドウワタカイガラムシ(新発生)

 

 

 

  平成30年6月上旬に、長沼町の中央農試果樹園内に植栽されたカーランツ(平成13年植栽)の茎上に、綿状の卵のうを伴うカイガラムシ成虫が認められた。当該カイガラムシは体長、体幅共に5mm程度で、体色が褐色で扁平、楕円形であり、発見時にはすでに幅、高さ共に5mm程度の白色の卵のうを保持していた。この卵のうは粘着性をもち、引きはがすと糸状に伸び、内部には淡赤色の卵を多数含んでいた。高密度に寄生した場合、20個体程度の雌成虫と卵のうで枝の一部が覆われるような状態になっていた。また、寄生部にはトビイロケアリが多数随伴していた。経過を観察したところ、6月下旬には卵のうから幼虫のふ化が認められた。ふ化幼虫は体長1mm程度、扁平な楕円形で、体色は淡赤色であった。7月上旬にはふ化盛期となり、卵のうや周辺の枝、葉、果実上を多数の幼虫が歩行していた。
 寄生したカイガラムシは、横浜植物防疫所によりブドウワタカイガラムシPulvinaria vitis (Linnaeus)と同定された。本種は広食性で、寄主植物としては14科30属が知られ、農作物では、著名な害虫として位置づけられているぶどうやりんごなどバラ科果樹にも寄生記録があることから、今後他の作物でも注意が必要である。

(中央農試)

写真 枝上の卵のう(中央農試 岩ア 原図)

写真 ふ化幼虫(中央農試 岩ア 原図)


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