北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成30年度新発生病害虫]
にんじんの葉腐病(新称・国内新発生)
平成28年9月に後志管内羊蹄山麓で収穫期のにんじん(品種:向陽2号)で葉腐れ症状が発生した。発病株ははじめ葉柄と葉身が褐変し、やがて地上部全体が枯死に至った。根部には症状は認められなかった。り病葉からは単一の糸状菌が分離された。分離菌は菌糸幅7.0~9.5(平均8.0)μm、1細胞あたりの核数は4~11(平均7.8)個であり、かすがい連結を形成しなかった。菌糸は先端細胞の隔壁の直下で分岐し、分岐部はくびれ、分岐部付近に隔壁を形成した。以上の形態的特徴より分離菌をRhizoctonia solani Kühnと同定した。さらに温度別菌糸伸長程度、培養菌叢、亜群特異的PCR法に基づき、分離菌のAGおよび亜群をAG-1 IBと同定した。R. solaniによるニンジンの葉腐れ症状は国内未報告であるが、根部の病害としてAG-2-2 IVによる根腐病が報告されている。両者の異同を検討するため、分離菌と根腐病菌の病原性を比較した。分離菌の接種により、葉では原病徴が再現され、接種菌が再分離されたが、根部では分離菌は腐敗症状を起こさなかった。一方、根腐病菌は根部に強い病原性を示した。両者は原病徴が異なり、病原菌の所属および根部に対する病原性も異なったことから別病害として扱うことが妥当であると判断した。R. solani AG-1 IBによる葉腐れ症状をニンジン葉腐病と呼称することを提案した。
(中央農試・道南農試・後志農業改良普及センター本所)
写真 葉腐症状(中央農試 森 原図)
新発生病害虫一覧へ戻る