北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成30年度新発生病害虫]
たまねぎの黒腐菌核病(新発生)
平成27年7月に美幌町で生育不良株が発生し、鱗茎に0.5mm程度の黒色の菌核が多数付着していた。菌核からは糸状菌が分離された。また平成29年6月にも美幌町で立枯れ症状を起こしたたまねぎに同様の菌核が付着し、平成27年と同様の糸状菌が分離された。これらの平成27年分離株と平成29年分離株をたまねぎに接種したところ原病徴が再現され、接種菌と同一と考えられる糸状菌が再分離された。これらの分離菌はPDA培地上で白色の菌叢となり、20℃で培養すると2週間後から黒色で球形、大きさ0.3〜0.5mmの菌核を形成した。また、これらはSclerotium cepivorumの特異的プライマーに反応し、rDNA-ITS領域の塩基配列はS. cepivorumに99.9%一致した。以上より分離菌をS. cepivorum Berk、本病をタマネギ黒腐菌核病と同定した。本病は、国内外のたまねぎ生産現場における重要病害で、貯蔵期間中にも被害が発生するとされているが、現時点では貯蔵中の発生は確認されていない。また、本病原菌はたまねぎだけでなくねぎ類全般を侵すことで知られている。道内でもねぎでは発生が認められていたが、これまでたまねぎでの発生は確認されていなかった。なお、本病は15℃以下で発病しやすく、秋植えで栽培する道外では1月以降、鱗茎が肥大し始めてから発病が認められる。北海道では春植え栽培のため、春に発病好適気温となり、早期に立枯れたと考えられる。海外の春植え栽培でも立枯れ症状の発生は確認されている。
(北見農試・網走農業改良普及センター美幌支所)
写真 鱗茎に認められた多数の菌核(北見農試 池谷 原図)
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