北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成30年度新発生病害虫]
小麦のなまぐさ黒穂病(病原の追加)
国内の小麦なまぐさ黒穂病は、網なまぐさ黒穂病(Tilletia caries)、丸なまぐさ黒穂病(Tilletia laevis)がすでに知られている。北海道各地で発生しているなまぐさ黒穂病の10菌株と埼玉産の1菌株(T. caries)について小麦への接種試験および厚膜胞子の形態、発芽条件について比較を行った。接種によっていずれも生臭いにおいを伴う黒穂症状を再現したが、北海道株の「キタノカオリ」への接種によって草丈が健全株の40%程度(埼玉株は約80%)と病徴に違いが見られた。厚膜胞子は球形〜亜球形、黄褐色~赤褐色、表面は網目状であるものの、北海道株はゼラチン様の外皮で覆われている点、外皮を含む直径が埼玉株と異なった。SEA培地上での発芽は、北海道株は5℃が最も好適で、15℃では1菌株だけが3週以降に10%未満の発芽が認められたのみであった。一方、埼玉株は15℃で7日以内に70%以上発芽した。以上の結果から、北海道株は埼玉株と性質が明らかに異なり、Duranら(1961)の報告との比較から、Tilletia controversa Kühnと同定した。T. controversaによるコムギなまぐさ黒穂病の発生は国内初であり、病原菌の追加を提案した。本病菌は、国内では大麦のなまぐさ黒穂病菌として報告があるが、海外では小麦のなまぐさ黒穂病菌としても知られている。また本病原菌は、土壌伝染が知られており、北海道株では土壌接種による感染が確認された。
(上川農試・中央農試)
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