北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成28年度新発生病害虫]
ばれいしょの黒あし病(病原の追加・国内新発生)
平成25年7月、十勝地方において、ばれいしょの茎の地際部が黒く軟化腐敗する症状が発生した。本症状は種塊茎の腐敗と茎維管束の褐変を伴っていたことから黒あし病と考えられたが、腐敗茎から分離された細菌は既報の3菌種(Dickeya sp. 、Pectobacterium carotovorum の一系統、P. atorosepticum)に該当しなかったため、病原性試験、細菌学的性状試験および遺伝子解析により分離菌株の同定を行った。分離された代表菌株を無病種塊茎に浸漬接種しほ場で栽培したところ、種塊茎の腐敗を伴う原病徴が再現され、接種菌が再分離された。分離菌はグラム陰性、OF試験はF型、ばれいしょ塊茎腐敗能を有するなど他の性状も含めPectobacterium属菌であると考えられた。また、インドールを生成し、α-M-グルコシドから酸を生成せず、37℃条件下で生育した。以上に加え、IGS領域ならびにハウスキーピング遺伝子(acnA、gapA、icdA、mdh、proA、mtlD、pgi)の塩基配列に基づく分子系統解析の結果から、分離菌はPectobacterium carotovorum subsp. brasiliense と同定された。
本菌は、平成16年にブラジルで初めてジャガイモ黒あし病の病原菌であることが明らかにされた。その後も南アフリカ、ニュージーランド、ケニア、スイスなど諸外国から発生報告が相次いでいるが、日本国内における本菌による黒あし病の発生は初確認である。道内では十勝地方のほかに、石狩および空知地方においても本菌による黒あし病の発生を確認している。
(十勝農試・北海道農業研究センター・種苗管理センター)
写真 茎の黒あし症状(十勝農試 安岡 原図)
写真 黒あし病による萎凋症状(十勝農試 安岡 原図)
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