北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成27年度新発生病害虫]


てんさいの褐斑病(薬剤耐性菌の出現)

 

 

  平成26年、十勝地方のほ場において、てんさいの褐斑病に対するトリフロキシストロビン水和剤Fの防除効果が十分に得られない事例が発生した。当該ほ場を含めた十勝およびオホーツク地方の褐斑病発生ほ場から病原菌(Cercospora beticola)を分離し、没食子酸プロピル2mM加用PDA培地に同剤を10倍段階で添加し感受性検定を行ったところ、131菌株中57菌株(39ほ場中22ほ場)で1,000ppm添加培地でも菌糸伸長が確認された。培地上の検定で感受性と判断された2菌株と耐性の1菌株をポットで育成したてんさいに噴霧接種し、同剤1,500倍液散布の防除効果を調べたところ、耐性菌では防除効果が認められなかった。また、同菌株はアゾキシストロビンおよびクレソキシムメチルに対しても耐性を示し、同菌株のチトクロームb遺伝子のアミノ酸配列は既報(Bolton et al.,2013)と同様に143番目のアミノ酸がグリシンからアラニンに置換していた。以上の結果からこの菌株は本剤に対する耐性菌であり、耐性菌の発生しているほ場ではQoI剤による防除効果が得られないと考えられた。さらに、平成27年に全道の耐性菌発生状況を調査したところ、空知、石狩、後志、胆振および上川地方においても発生が確認されたため、QoI剤に対する耐性菌は全道広く発生していると考えられた。本病に対する防除薬剤としてはQoI剤の使用は避け、作用点の異なる他系統の薬剤を使用する必要がある。

                                                        (中央農試・上川農試・十勝農試・北見農試・花野セ)


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