北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成27年度新発生病害虫]
水稲の赤色菌核病(新発生)
平成25年9月、深川市、沼田町、旭川市および比布町において、収穫期の水稲の葉しょう部に紋枯病に類似した病斑を形成する症状が発生した。罹病部には、周縁が暗褐色で中央が褐色の紡錘形斑紋を形成し、重症株では罹病部が枯死して稈が折損した。罹病した葉しょうの内側には、橙〜鮭肉色で板状の菌核が認められ、罹病葉しょうからは単一の糸状菌が高率に分離された。分離菌のPDA培地上での培養菌叢は、はじめ白色でやがて薄橙〜鮭肉色を呈し、培地上に鮭肉色で直径1〜3mmの不整形の菌核を形成した。分離菌を稲に接種したところ、紡錘形の病斑が再現され、接種菌が再分離された。分離菌はWA培地上で菌糸幅2.8〜7.3(平均5.0)μmで、1細胞に2〜13(平均5.9)個の核を有した。菌糸は先端細胞の隔壁の直下で分岐し、分岐部はくびれ、分岐部の直近に隔壁を形成し、かすがい連結を形成しなかった。菌糸は10〜38℃で生育し、生育適温は30℃前後であった。また、Rhizoctonia oryzae特異的プライマーを用いたPCR法(Toda et al. 2004)により、目的のサイズの増幅断片が得られた。以上のことから、本症状をRhizoctonia oryzae Ryker & Gooch(完全世代Waitea circinata Warcup & P.H.B. Talbot 菌糸融合群WAG-O)によるイネ赤色菌核病と同定した。なお、平成26年以降、空知、上川地方以外に、留萌、渡島、桧山地方においても本病の発生を確認している。
(中央農試・上川農試・十勝農試・道南農試・名城大学・JAきたそらち・
空知農業改良普及センター・上川農業改良普及センター・
留萌農業改良普及センター・渡島農業改良普及センター・
桧山農業改良普及センター)
写真 水稲の赤色菌核病(十勝農試 東岱 原図)
写真 葉鞘の内側に形成される鮭肉色で板状の菌核(十勝農試 東岱 原図)
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