北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成26年度新発生病害虫]
ほうれんそうの株腐病(病原の同定)
平成25年9月、知内町で収穫期のほうれんそうで中心葉の腐敗症状、同年10月には北斗市で葉柄基部の腐敗症状が発生した。両症状からは糸状菌が高率に分離され、分離菌の接種により原病徴が再現された。知内町分離菌は、菌糸幅5.6〜8.3 (平均7.1)µm、核数は3〜13 (平均7.7)個、北斗市分離菌は、菌糸幅6.9〜9.8 (平均7.6) µm、核数は3〜7 (平均4.6)個であった。両菌株とも、菌糸は先端細胞の隔壁の直下で分岐し、分岐部はくびれ、分岐部の直近に隔壁を形成し、かすがい連結を形成しなかった。以上の形態的特徴より両菌株をRhizoctonia solani Kühnと同定した。知内町分離菌はPDA培地上で淡褐色の菌叢を呈し、褐色で表面粗造な菌核を形成した。北斗市分離菌は、灰色〜淡褐色で霜降状の菌叢を呈した。両菌株とも10〜30℃で生育し、生育適温は25℃、25℃における菌糸伸長程度は知内町分離菌が28.2 mm/ 24時間、北斗市分離菌が19.8 mm/ 24時間であった。分離菌をR. solani AG-1〜5の基準菌株と対峙培養した結果、知内町分離菌はAG-1、北斗市分離菌はAG-4と菌糸融合した。また、亜群特異プライマーを用いたPCR反応により知内町分離菌はR. solani AG-1 IB、北斗市分離菌はR. solani AG-4 HG-Iと同定された。これらの結果から、両症状をホウレンソウ株腐病と確認した。本病は道内でも発生記録があるものの、病原菌の菌糸融合群は不明であった。また、国内では本病の病原としてAG-1、AG-2-2、AG-4などが報告されている(Naiki and Kanoh 1978)が亜群は未同定であった。
(道南農試・渡島農業改良普及センター本所・渡島南部支所)
写真 ほうれんそうの株腐病(三澤
原図)
写真 ほうれんそうの株腐病(三澤
原図)
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