北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成26年度新発生病害虫]


    
にんじんのガマノホタケ雪腐病(新称・国内新発生)

 

   平成224月、芽室町の十勝農業試験場内の春掘にんじん(品種「向陽2号」および「トロフィー」)において葉やクラウンに暗赤色〜黒色で径12 mmの粒が付着し、根部が軟化腐敗する症状が認められた。軟化腐敗している根部の表面近くの組織には病原菌の菌糸が認められるが、根部内部には菌糸は侵入していなかった。春掘(越冬、雪下)にんじんではSclerotinia nivalisによる雪腐病が知られているが、雪腐病の病徴はネズミの糞状の菌核が形成され、根部に亀裂が生じ、内部にも白色菌糸と菌核が充満することが特徴であり、本症状はこれとは異なっていた。そのため発生実態調査を行ったところ、平成23年には滝川市の花・野菜技術センター場内、オホーツク地方の一般場、平成24年に後志および十勝地方の一般場で同様の症状が認められた。十勝地方で認められた菌核は上述の暗色小型菌核のみであったが、その他3地域ではそれ以外に淡褐色で径24 mmのやや大型の菌核(以下、淡色菌核)も付着していた。2種の菌核からはそれぞれ単一の糸状菌が分離され、分離菌の接種により原病徴が再現されるとともに接種菌が再分離された。

  暗色小型菌核からの分離菌は、菌糸にかすが連結を形成し、白色で棍棒状の長さ24 cm程度の子実体を形成した。担子胞子は円筒形で4胞子性であった。菌核の外皮は厚く、外皮細胞同士は融合せずに並び、外側に向かって台地状に盛り上がった。これらの特徴から暗色菌核からの分離菌はTyphula variabilis Riessと同定した。淡色菌核からの分離菌は、菌糸にかすが連結を形成し、白色で棍棒状の長さ24 cm程度の子実体を形成し、担子胞子は長楕円形で2胞子性であった。菌核表面は平滑で、外皮細胞は入り組んだ波状の紋様を示した。これらの特徴から、淡色菌核からの分離菌はTyphula japonica Teruiと同定した。Typhula属菌によるにんじんの病害はこれまで報告されていないため、病名をニンジンガマノホタケ雪腐病、病原菌の和名を雪腐厚膜小粒菌核病菌 (T. variabilis)、雪腐二胞子小粒菌核病菌 (T. japonica)とする。

                                                  (十勝農試・花野セ・北見農試)

写真 にんじんのガマノホタケ雪腐病根部(池田 原図)

写真 にんじんのガマノホタケ雪腐病地上部(池田 原図)


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