北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成25年度新発生病害虫]
緑肥用えんばくのいもち病(新称)
平成23年9月、北斗市で緑肥として栽培中のセイヨウチャヒキ(緑肥用えんばく、品種「ヘイオーツ」) で葉に斑点性の病害が発生した。病斑は初め長径5~20mmの紡錘形で、中央はクリーム色、周辺は褐色で、次第に拡大して葉身全体が枯死した。病斑上の分生子は、無色、3細胞、2横隔壁、洋梨形、基部にへそ状突起があり、内容は顆粒状、全出芽型で大きさ17.8~24.8×8~10µm
(平均:20.8×8.9µm)、分生子柄は、円筒形、真直ないし湾曲し、基部は淡褐色で先端は無色で仮軸状に伸長し、分生子脱落痕は小歯牙状、大きさ60~125×3.4~5.1µm
(平均:93.4×4.2µm)。単胞子分離による2菌株のrDNA-ITS領域の塩基配列はPyricularia griseaまたはP. oryzaeのものと100%一致した。分離菌株は、接種によりセイヨウチャヒキに病徴を再現し、イタリアンライグラスも発病させ、再分離されたが、小麦、大麦、ケンタッキーブルーグラスには病原性を示さなかった。以上の結果より本病を国内初発生病害と認め、Pyricularia属菌によるセイヨウチャヒキいもち病と提案した。
いもち病はイネの最重要病害であるが、イネ科植物に感染するいもち病菌は作物種毎に病原性が異なり、本病の病原菌の病原性もイネいもち病菌とは異なる。また、品種「ヘイオーツ」は一般に「エンバク野生種」と呼称されているが、植物の分類上はエンバク(Avena sativa)とは別種のセイヨウチャヒキ(Avena strigosa)に属し、本病は「エンバクいもち病」とは異なる新病害である。
(道南農試・農業生物資源研究所)
写真 セイヨウチャヒキいもち病によるセイヨウチャヒキ(緑肥用えんばく、品種「ヘイオーツ」)の葉の斑点症状(道南農試 三澤 原図)
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