北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成25年度新発生病害虫]


デルフィニウムの茎腐萎凋病(新発生)


 平成21年、新ひだか町の施設栽培シネンシス系デルフィニウム(Delphinium grandiflorum)において、生育初期から後期に下葉から黄化、枯死し、まれに茎が黒変しやがて鮭肉色のスポロドキアを茎表面に形成する症状が認められた。これらの株の維管束は根部から茎にかけて褐変しており、褐変部からは高頻度にFusarium属菌が分離された。分離菌の分生子懸濁液をシネンシス系デルフィニウム「マリンブルー」に灌注接種したところ病徴が再現され、維管束部から接種菌が再分離された。分離菌はPDA培地上で白色綿毛状のコロニーを形成し、SNA培地上で鎌形の大型分生子、小型分生子および厚壁胞子を形成し、小型分生子は短い分生子柄上のモノフィアライドに擬頭状に形成した。分離菌4菌株のrDNA-ITS領域およびTEF1-α領域の塩基配列はF. oxysporumと99%以上の相同性があった。
 以上の結果から本病は平成20年に青森県で発生したデルフィニウム茎腐萎凋病(病原菌:Fusarium oxysporum Schlechtendahl)と同一と考えられるが、青森県ではエラータム系デルフィニウム(Delphinium elatum)で確認されており、シネンシス系品種での発生はない。そこで、北海道および青森の分離菌株をエラータム系4品種およびシネンシス系7品種の苗に灌注接種したところ、エラータム系品種に対して、青森株は強い病原性を示し4品種とも枯死させたが、北海道株では萎凋、黄化する品種はあるものの枯死させることは無く、病原性は明らかに弱かった。一方、シネンシス系の品種に対しては、青森株でも病原性が認められたものの、いずれの品種でも北海道株が青森株よりも強い病原性を示した。以上の結果から本症状は茎腐萎凋病と考えられたが、本病原菌は地域によって病原性が分化していると考えられた。

(上川農試・日高農業改良普及センター本所)


写真 デルフィニウム茎腐萎凋病による葉の黄変症状(上川農試 新村 原図)



写真 デルフィニウム茎腐萎凋病による維管束褐変の症状(上川農試 新村 原図)


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