北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成25年度新発生病害虫]
ブロッコリーのヒメダイコンバエ(新寄主)
平成25年7月から10月にかけて、中標津町のブロッコリーでハエの幼虫による根部の食害が確認された。根部には一株あたり10頭前後の幼虫が寄生し、主根の表面および内部を食害していた。さらに細根はごく僅かしか認められず、被害株は容易に引き抜くことができた。なお、被害部周辺の土中には蛹も認められた。被害株は地上部の生育が劣ると共に葉が萎れ、多発ほ場での製品歩留まりは10%未満に止まった。9月下旬に実施したほ場調査において、卵は地際もしくは地際に近い主茎表面に一粒ずつ認められた。加害種は羽化成虫の形態からヒメダイコンバエDelia planipalpis (Stein)と同定した。アブラナ科作物の根部を加害するハエ類の内、最も普通に発生の認められるタネバエは、幼虫の頭部付近に位置する前気門の小孔数が5〜8個であるのに対し、本種幼虫は10〜15個と多いことが特徴である。成虫はタネバエと比較してやや大型で、背側域後方に位置する前翅基背刺毛が長大である点で雌雄共に当該刺毛の短いタネバエと異なる。また、雄成虫は胸部背面が灰黒色である一方、胸部の肩瘤、背側域がやや灰色を帯びる。近縁のダイコンバエが8月上旬以降の年1回発生であるのに対し、本種は6月頃以降、年3回程度発生する。
本種の道内分布は局所的で、昭和33年の調査では根室、釧路、宗谷、留萌、昭和55年にオホーツク管内で記録されている。中標津町では平成24年からだいこんでも本種による被害が目立っている。本種が多発に転じた原因は不明である。
(北見農試・技術普及課・根室農業改良普及センター北根室支所・十勝農試)
写真 ブロッコリーの根を食害するヒメダイコンバエの幼虫(技術普及課 上堀氏 原図)
写真 ヒメダイコンバエ成虫(十勝農試 岩ア 原図)
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