北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成24年度新発生病害虫]


メロンの果実内腐敗病(新発生)


 平成20年9月、共和町で生産されたメロン(品種「レッド113」)に強い苦みがすると消費者からクレームが生じた。返品された果実の果肉組織から性状が均一な細菌が分離された。分離細菌を開花後7〜10日のメロン幼果の花痕部に刺針接種して栽培したところ、外観上健全な果実が収穫できた。追熟後、果実を切断すると果肉や胎座部分に腐敗症状が確認され、果肉に苦みを伴うものもあった。発症果実からは接種菌が再分離された。分離細菌は緑色蛍光性色素非産生、グラム陰性、嫌気性でジャガイモ腐敗能はなく、細菌学的性質はPantoea ananatis (Serrano) Mergaert et al. と多くの点で一致し、16SrDNAの解析結果もこの同定を支持した。これらのことから本症状はP. ananatisによる果実内腐敗病であると同定した。本病は高知県のアールス系メロンで発生が報告されており、その症状は果実でのみ認められ、外観正常で果実内部のみが悪臭を伴って腐敗するとされる。一方、道内の赤肉メロンにおける発生状況をみると、出荷後も果実の腐敗症状が強くないため、購入した消費者が食して苦みを確認し、切断時あるいは数日のうちに果肉に水浸状の腐敗が認められる場合が多い。このため本病は腐敗よりも苦みを強く認識される傾向があるが、苦みそのものの原因は不明であるため、本病と苦みの因果関係についてはさらに検討を要する。また、出荷後に認められる果実異常については症状・原因とも不明なものも多く含まれており、本病の発生・被害状況は明らかでない。しかし同様の症状は滝川市、安平町および富良野市でも確認されており(菌未同定)、多くの生産地で出荷後に発生している果実内部の腐敗症状あるいは「果肉が苦い」というクレームに関して、本病の発生が要因のひとつになっている可能性がある。

(花野セ)

メロンの果実内腐敗病(野津)

写真 メロンの果実内腐敗病(花野セ 野津 原図)


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