北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成24年度新発生病害虫]
トマト・ミニトマトのウロコタマバエの一種(新発生)
平成22年8月、余市町のハウス抑制作型トマトにおいて、摘心跡や側枝切除跡から茎部が茶から黒褐色に変色し亀裂が入る症状が発生した。当該内部は黒変し、体長2mm程で黄色のタマバエ科の幼虫が認められた。平成24年8月には、果実でも果頂部または萼基部が黒褐色に変色し、内部には類似の幼虫が確認された。これら幼虫は、植物体上で営繭、蛹化の後、年内に成虫が羽化するものがいた。成虫は体長1.8mm程度で身体全体に鱗毛を有し、体色は暗褐色、触角は頭部の高さの2倍程度とタマバエとしては短い。また、腹部背面には白色の横縞を持ち、基節、転節、腿節末端および脛節基部と末端が黄褐色を呈する。発生種は、九州大学・鹿児島大学名誉教授の湯川淳一博士により、ウロコタマバエ属の一種
Lasioptera sp. であることが確認された。本属の種には、産卵管に釣り針状の胞子運搬構造をもち、産卵後に寄生部位や形成した虫えい内に菌糸を生長させる事例が知られている。トマトの茎部に被害をもたらすタマバエ科の報告は国内にはなく、ギリシャでトマトに類似症状を生じさせている同属の未同定種(Perdikis
et al.,2011)が報告されているが、種名については現在検討中である。
現地調査の結果、本種は仁木町でも発見され、調査を行った生産者16戸中の6戸で確認された。また、中玉トマトとミニトマトにも寄生し、長期どり作型でも確認されている。現在のところ確認されている侵入部位は、主に摘心や側枝切除跡などの傷が付いた部分からのみである。被害は、侵入部位の直近の葉や果房が枯死することはあるが、株全体に影響する事例は確認されていない。現時点で果実被害が確認されているのは1戸のみである。発生生態等は不明であるため、今後の調査を要する。
(花野セ・後志農業改良普及センター北後志支所)
写真 ウロコタマバエの一種による茎の亀裂症状(花野セ 橋本 原図)
写真 ウロコタマバエの一種の幼虫(花野セ 橋本 原図)
写真 ウロコタマバエの一種の成虫(花野セ 橋本 原図)
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