北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成24年度新発生病害虫]


にんじんの苗立枯病(新発生)


 平成23年5 月、中富良野町のにんじん(品種「向陽二号」)栽培圃場で播種1ヶ月後の株に立枯症状が発生した。罹病部からは単一の糸状菌が分離され、分離菌の接種により原病徴が再現されるとともに、接種菌が再分離された。分離菌は菌糸幅6.9~11.8(平均8.8)μm、1細胞あたりの核数は5~15(平均8.8)個であり、かすがい連結を形成しなかった。菌糸は先端細胞の隔壁の直下で分岐し、分岐部はくびれ、分岐部付近に隔壁を形成した。以上の形態的特徴より分離菌をRhizoctonia solani Kühnと同定した。分離菌はPDA培地上ではじめ白色でやがて灰色となり、黒色で微小な菌核を形成した。10~35℃で生育し、生育適温は25℃、25℃における菌糸伸長程度は22.8mm/24時間であった。分離菌をR.solani AG-1~5の基準菌株と対峙培養した結果、AG-1とのみ高頻度で菌糸融合した。また、AG-1 IC特異プライマーを用いたPCR反応によりDNA断片が増幅された。以上より分離菌をRhizoctonia solani AG-1 IC、本症状をニンジン苗立枯病と同定した。R. solani によるにんじん病害として根腐病(AG-2-2 IV)が報告されているが、分離菌のにんじん根部に対する病原性は極めて弱く、本病は根腐病とは明らかに異なる病害であった。

(道南農試・上川農試・上川農業改良普及センター本所)

にんじんの苗立枯病(小松)

写真 にんじんの苗立枯病(中央農試 小松 原図)


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