北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成24年度新発生病害虫]


とうもろこしの褐色腐敗病(新称)


 平成元年頃から、北海道内のとうもろこし(生食用)において、雌穂の包皮に褐色水浸状の病斑が発生し問題となっていた。平成21年および22年に病斑部から分離した細菌の懸濁液を包皮に注射接種したところ、原病徴が再現され、接種菌が再分離された。本菌はグラム陰性の稈菌であり、極毛を有し、普通寒天培地中に非蛍光の黄色色素を産生する。また、40℃で生育し、OFテストはOタイプ、カタラーゼ、ゼラチン液化は陽性、オキシダーゼ、アルギニンジヒドロラーゼ、硝酸塩の還元は陰性であった。16S rRNA遺伝子約1400塩基の配列はBurkholderia gladioliと99%以上の相同性を有した。また、スクロース、L-ラムノース、マルトース、ラフィノース、エリスリトール、グリシンを利用しないなど炭素源利用の特性もB. gladioliと一致した。以上から本菌をB. gladioli(Severini) Yabuuchi, Kosako, Oyaizu, Yano, Hotta, Hashimoto, Ezaki & Arakawa と同定した。本菌によりとうもろこしの雌穂包皮が褐変する病害として、ブラジルと米国でEar Soft Rotが報告されている(Almeida et al., 1999、Lu and Henn, 2007)。病徴と病原の一致から、本病は本邦未発生のEar Soft Rot と考えられ、病名をトウモロコシ褐色腐敗病と提案した。

(中央農試)

トウモロコシ褐色腐敗病(相馬)

写真 トウモロコシ褐色腐敗病による包皮の褐変症状(中央農試 相馬 原図)


新発生病害虫一覧へ戻る