北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成23年度新発生病害虫]
ぶどうの晩腐病(病原の追加)
平成22年7月、奥尻町の醸造用ぶどうに葉の褐変症状が発生した。発生は果実の着果位置付近で多く、発生は圃場全面で認められたが、特に品種「メルロー」で発生が多かった。罹病葉ははじめ直径2〜3mmの黄色〜黄緑色の病斑を形成し、これが褐色不整形病斑となり、しだいに融合して大型の病斑となり葉面積の50%程度に達した。病変部からは糸状菌が分離され、分離菌を接種すると原病徴が再現され、接種菌が再分離された。分離菌のPDA培地上での培養菌そうははじめ白色のち灰色になる菌株とピンク色になる菌株があった。分離菌の分生子は紡錘形で大きさは平均9.0〜12.0×3.3〜4.2μmで、付着器は楕円形ないし棍棒状で凹凸はなかった。PDA培地上での25℃5日間培養した菌そうの直径は22.6〜32.4mmで、ジエトフェンカルブ含有培地、ベノミル含有培地の菌そう直径は、無添加培地に対し20%以上伸長した。また、分離菌はColletotrichum acutatum の種特異的PCR法で増幅断片が得られた。以上より分離菌をColletotrichum acutatum Simmonds ex Simmonds、本病をブドウ晩腐病と同定した。道内ではこれまでColletotrichum gloeosporioides(Glomerella cingulata)による本病の発生は確認されているが、C.acutatum による晩腐病の発生が確認されたのは、本事例がはじめてである。
(道南農試・檜山農業改良普及センター本所)
写真 葉での症状(道南農試 三澤 原図)
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