北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成23年度新発生病害虫]
だいこんのリゾクトニア病(新症状)
平成22年8月、七飯町の露地栽培だいこん(品種「YR夏大慶」)で、収穫根部に大きさ約5mmの褐色の物質が付着して、洗浄しても離脱しない症状が発生した。この付着物は、Rhizoctonia 属菌の菌核であり、これを顕微鏡で観察すると厚膜化した樽型菌糸が認められた。菌核からは単一の糸状菌が分離された。分離菌は、菌糸はほぼ直角に分岐し、分岐部はくびれ、分岐部付近に隔壁を形成した。菌糸幅は平均8.1μm、多核(平均9.9個)であることから、分離菌をRhizoctonia solani Kühnと同定した。分離菌の菌糸融合群(AG)および亜群は、菌糸融合反応、温度反応、培養菌叢、PCR反応よりAG-1ⅠBと同定した。分離菌をだいこん根部に接種したところ、原病徴が再現され、接種菌が再分離された。接種株ではわずかに根部の腐敗も認められたが、原病徴においては腐敗は認められなかった。以上のことから、菌核付着症状は、R.solani AG-1ⅠBによるだいこんのリゾクトニア病の一症状であると判断した。道内では本病による根部の腐敗、粗皮症状および葉腐症状の発生報告はあるが、菌核付着症状の発生事例はこれまでない。なお、国内では昭和50年代に四国において本症状の発生が確認されている。
(道南農試・渡島農業改良普及センター本所)
写真 根部の症状(道南農試 三澤 原図)
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