北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成23年度新発生病害虫]
ばれいしょの夏疫病(新症状)
平成22年4月、訓子府町の北見農試内で貯蔵中のばれいしょ塊茎(品種「ゆきつぶら」および育成中の1系統)に、直径数mm〜1cm程度、円形〜不整形の灰黒色陥没症状が認められた。病斑は深さ0.5〜2mm程度に達し、コルク化も認められ、次第に拡大して融合した。病斑からはAlternaria 属菌が高率に分離され、分離菌の分生子懸濁液をばれいしょ塊茎に噴霧接種すると、有傷でのみ原病徴が再現され、接種菌が再分離された。分離菌のPDA培地上の培養菌叢は灰色〜灰緑色で、黄〜橙色の色素を産生した。PCA培地上で形成した分生子は単生、2〜3本に分枝する89〜225μmの細長い糸状ビークを有し、本体は長楕円〜倒棍棒形で、大きさ71〜120×19〜25μm、1〜2縦隔壁、6〜10横隔壁であった。分離菌は、噴霧接種により、ばれいしょの葉には夏疫病と同様の輪紋状斑点を生じ、にんじん及びねぎの葉には病原性を示さなかった。以上の形態的特徴および病原性より、分離菌をAlter-naria solani (Ellis & Martin)Sorauer、本症状をジャガイモ夏疫病の塊茎病斑と同定した。夏疫病の塊茎病斑の発生は、海外では報告があるが、国内での確認は本事例が初めてである。
(北見農試・道南農試)
写真 塊茎の症状(北見農試 白井 原図)
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