北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成23年度新発生病害虫]
小麦の赤かび病(耐性菌の出現)
平成21年および22年に、秋まき小麦のMicrodochium nivale による赤かび病に対して効果があるクレソキシムメチル水和剤Fについて、期待する防除効果が発揮されない事例が十勝地方のほ場で見られ、本剤に対する感受性の低下が疑われた。このため、十勝地方の現地ほ場2地点から分離した5菌株を接種した小麦での防除効果試験と、クレソキシムメチル加用寒天平板培地上での生育抑制程度による薬剤感受性検定を行った。その結果、5菌株中3菌株がクレソキシムメチル耐性菌であることを確認した。これを受け、道内の23市町村30地点の秋まき小麦および春まき小麦から207菌株を分離し、モニタリング調査を行った結果、20地点(66.7%)からクレソキシムメチル耐性菌が検出され、供試菌株のうち97菌株(46.9%)が耐性菌であった。なお、本剤に耐性のM.nivale は、2009年にフランスでの発生報告があるが、わが国では初確認である。クレソキシムメチル耐性M.nivale が発生しているほ場では、本剤散布による十分な防除効果が期待できないと考えられることから、耐性菌の出現が懸念されるほ場ではM.nivale による赤かび病の防除を目的としたクレソキシムメチル剤の使用を回避する。なお、他の赤かび病菌(Fusarium属菌)では、クレソキシムメチルに対する感受性低下は報告されていない。
(十勝農試)
写真 薬剤培地上での菌糸伸長(十勝農試 安岡 原図)
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