北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
昭和60、61、62年の6〜9月に月形町、長沼町、当麻町などでスターチスの花(ガク)や花梗に淡褐色水浸状の小斑点ができ、のち次第に拡大して不整形の褐色病斑が形成された。また一部の個体では地際の茎と葉柄に褐色不整形の病斑が形成され、のちに全葉が腐敗、枯死する病害が発生した。これらの病斑部を多湿下に置くと灰色カビが生じた。このカビを PDA培地を用いて分離し、増殖してスターチスの各部位に接種したところ、自然発病と同じ症状を呈し、さらに接種菌と同じ形態の糸状菌が再分離された。
本病原菌は分生子柄の枝が輪生せず、分枝の先端が太く、これに卵形の分生子を塊生することからBotrytis に属する。さらに本菌の分生子の大きさは7−12×5−8μmで、分生子柄の長さは65−150μmであることからB.cinerea Pers.と同定された。現在北海道で栽培の多いスターチスはボンジェリー(Limonium bonduellii )、シヌアータ(L.sinuatum )、ラテホリア(L.latiforium )、アルタイカ(L.altaica )であるが、本病はこれら4種のスターチスで発生が認められた。本病の発生は多湿条件下で助長される。なお本病原菌の菌株の一部ではジカルボキシイミド系殺菌剤およびベンゾイミダゾール系殺菌剤に耐性であることが確認された。