北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
昭和62年8月、余市町のブドウ園でサビ果に似たアザミウマによる被害が認められた。成虫の体長は0.8〜0.9mm、全体に淡黄色で翅がやや黒味をおびており、蚕糸試験場の宮崎昌久氏によりチャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis Hood)と同定された。本種はカンキツ、カキ、ブドウ、ナシ等の果樹をはじめ、チャ、イチゴ等の広い寄生範囲をもち、これまでその分布は本州以南とされていた。
余市町ではブドウの栽培面積は569haであるが、現在までのところ本種の発生が認められているのは4農家の合計2haである。葉、果穂、果軸などに寄生が認められ、果実では果面よりわずかに隆起した褐色の不整形斑が形成され、商品価値が著しく損なわれる。
被害を受けた品種はキャンベル、ナイヤガラ、デラウェアなどであり、被害果房率は農家、品種を平均して39.5%となり、寄生密度の高いところでは80%にも達した。
本種は越冬場所、越冬方法などについてはまだ十分に解明されておらず、本州以南では春から秋にかけて長期にわたって発生し、年間5〜6世代を経過するといわれている。今後、道内における発生地域の拡大について十分注意を払う必要がある。