2)ばれいしょ新品種候補「根育29号」

根釧農業試験場 研究部 馬鈴しょ科  
(ばれいしょ育種指定試験地)  

1.はじめに
 近年、消費者の食品の安全性への関心がますます高まっており、北海道においてもクリーン農業推進のための取り組みが行われている。ばれいしょ栽培において減農薬あるいは無農薬栽培を安定的に行うためには疫病を回避することが最も重要であり、疫病抵抗性、特に菌のレースによる特異性のない圃場抵抗性品種が求められていた。

2.育成経過
 本系統は、昭和59年、疫病圃場抵抗性の多収性近縁種系統「S.tuberosum ssp.andigena(W553-4)」を母、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性の「R392-50」を父として交配し、以後選抜を図ってきた。

3.特性の概要
 本系統はやや開張型の草型で、茎の長さは「農林1号」よりやや長い。花は大きく、「男爵薯」より濃い赤紫系で、開花期間も長いことから、観光農園などで景観作物としても利用できる可能性がある。ふく枝は長い。いもの形は扁球形、皮色は淡赤色、目は「男爵薯」並に深い。肉色は淡黄色で赤い着色はみられない。
 休眠期間は「男爵薯」より短く「農林1号」並のやや短。枯凋期は「男爵薯」よりかなり遅く「農林1号」並の中晩生。いもの早期肥大性はやや遅い。一個重が小さいので、上いも重(20g以上)は「男爵薯」より多く「農林1号」並であるが、中以上いも重(60g以上)では「男爵薯」より多いものの「農林1号」より少ない。でん粉価は「農林1号」より低く「男爵薯」並。褐色心腐および中心空洞はほとんど発生しない。疫病圃場抵抗性は極めて強く、発病しても病斑の拡大は非常に遅い。根釧農試の疫病無防除栽培において「農林1号」の上いも重は、疫病により慣行防除比43〜67%と大きく減収するのに対して、本系統では87〜96%と減収はわずかであり、でん粉価やビタミンCなどの品質の低下もごくわずかである。塊茎腐敗抵抗性は「男爵薯」および「農林1号」より強いやや強である。そうか病および粉状そうか病抵抗性は「男爵薯」並に弱い。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有し、発生圃場において根にシストの着生は認められず、本系統の作付により土壌中の線虫の卵密度は大幅に低下する。
 調理後の肉質は中で、「男爵薯」より粉質度が低い。調理後黒変は「男爵薯」より多く「農林1号」より少ない。煮くずれは「男爵薯」より少ない。舌ざわりは滑らかである。チップ・フライの褐変程度は「男爵薯」並の中で、油加工には適さない。食味は「農林1号」並の中で、低温貯蔵後に甘みが増しやすい。用途は調理用。

4.普及態度
 普及対象地域・・・北海道一円。減農薬・無農薬のための専用品種として普及をすすめる。
《栽培上の注意》
 @塊茎形成および肥大が遅いので、浴光催芽、早植えなど初期生育の確保につとめること。
 A疫病の無防除と組み合わせて他の薬剤の使用も控える場合には、土壌病害や軟腐病、菌核病の
  発生が多い圃場での栽培を避けること。
 B収穫後は、赤皮で緑化いもとの識別が難しいので、遮光シートで覆うなど曝光を避ける。
 C休眠が短いので、低温貯蔵につとめること。



表1  生育および収穫物調査成績
試験場 系統名または
品種名
茎長
(cm)
枯凋期
(月日)
上いも数
(個/株)
一個数
(g)
上いも重
(kg/10a)
対標準比
(%)
中以上
いも重
(kg/10a)
対標準比
(%)
でん粉価
(%)
根釧 根育29号 73 10.9* 13.4 80 4,021 120 3,146 114 15.7
男爵薯 45 9.18 9.9 86 3,341 100 2,770 100 14.8
農林1号 68 10.9* 8.9 118 4,019 120 3,765 136 17.7
十勝 根育29号 91 9.27 14.2 72 4,454 124 3,065 104 14.3
男爵薯 48 9.6 9.6 84 3,578 100 2,954 100 14.8
農林1号 81 9.30 9.3 104 4,312 121 3,933 133 16.0
北見 根育29号 89 9.30 15.6 78 5,583 134 4,289 115 14.5
男爵薯 57 9.4 8.8 105 4,156 100 3,741 100 14.2
農林1号 82 10.1 8.8 119 4,790 115 4,498 120 16.3
注)試験年次は根釧農試が平成元、5〜8年、十勝農試が平成5〜8年、北見農試は平成6〜8年。
 枯凋期欄の*印は霜による枯凋を含む。


表2  塊茎、調理特性および病害虫抵抗性
系統名
または
品種名
いもの形 皮色 表皮の
粗滑
目の
深浅
肉色 休眠期間 肉質 調理後
黒変
煮くずれ 舌ざわり 食味
根育29号 扁球 淡赤 淡黄 やや短 やや少
男爵薯 白黄 やや長 やや粉 中上
農林1号 扁球 白黄 やや短
系統名
または
品種名
用途 褐色
心腐
中心
空洞
二次
生長
葉巻病 Yモザイク病 疫病
圃場
抵抗性
塊茎
腐敗
そうか病 粉状
そうか病
シストセンチュウ
抵抗性遺伝子型
根育29号 調理 ごく強 やや強 H1
男爵薯 調理 h
農林1号 兼用 h


図1  疫病無防除区との慣行防除区における上いも重の比較(根釧農試)


表3  茎疫無防除栽培における塊茎の成分
系統名
または
品種名
処理 でん粉価
(%)
乾物率
(%)
ビタミンC
(mg/100gFW)
蛋白質
(%)
根育29号 慣行防除 15.1 23.0 17.3 1.73
無防除 14.8 22.3 17.2 1.65
農林1号 慣行防除 17.7 23.9 16.4 1.67
無防除 14.2 19.5 13.6 1.85
注)平成4〜8年の平均。供試材料は根釧農試産。分析は各年次11月に中央農試品質評価科が行った。
 でん粉価は根釧農試測定値。

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