平成14年度 病害虫発生予察情報第18号

9月月報

平成14年10月8日 北海道病害虫防除所
(連絡先:Tel.0123(89)2080


気象概況
A.水稲
B.豆類
C.てん菜
D.りんご
E.あぶらな科野菜

I.気象概況

(札幌管区気象台発表 北海道地方気象速報)

──『並温・少雨・多照』低気圧の影響少なく、北部中心に記録的少雨──

8月までの低温・多雨・寡少の傾向は9月に入ってからは解消し、高気圧に覆われて晴れた日が多く、低気圧の影響を受けにくかった。このため北部や日本海側で特に少雨となり、旭川など5地点で月降水量の少ない記録を更新し、日照時間も北部を中心に多かった。気温は、上旬は高かったが、中旬以降は周期的に寒気が入り低温となった時期があった。

上旬:1日は気圧の谷の影響で曇りや雨となった。2〜3日は台風15号から変わった低気圧が北海道の北を通過し雨が降ったが、晴れた所も多かった。また、低気圧に向かって暖かい南風が吹き込んでオホーツク海側を中心に真夏日となり、最高気温が紋別34.2℃、雄武32.3℃、北見枝幸32.1℃など、9月としての極値を更新した。4〜5日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、日本海側の一部では曇って弱い雨が降った。6〜7日は前線の影響で東部を中心に雨が降ったが、7日は北部や日本海側では概ね晴れた。6〜7日の総降水量は東部の多い所で70ミリ前後。8日は高気圧に覆われ日本海側で晴れたが、その他は曇りで太平洋側では霧雨の降った所があった。9日は晴れた所が多かったが、気圧の谷の通過で東部では雨や雷雨の所があった。10日は高気圧に覆われ晴れた。

中旬:11日〜12日は気圧の谷が通過し、日本海側を中心に雨が降ったが晴れた所も多かった。13〜15日は晴れた所が多かったが、上空に寒気を伴った気圧の谷の影響で、13日は北部、14、15日は東部を中心に日中雨や雷雨となった。このため、北部や東部で突風や降ひょうによる被害が発生した。16日は高気圧に覆われ晴れた。17〜18日は低気圧の通過で全道的に雨が降り、総降水量は太平洋側の多い所で80ミリ前後となった。19日は高気圧の張り出しで日中は晴れたが、夜には気圧の谷の接近で北部では雨が降った。20日は気圧の谷が通過し、南西部やオホーツク海側で雨が降ったが、北部では晴れた。

下旬:21日〜22日は高気圧に覆われ概ね晴れた。23日は北部や日本海側で晴れたが、気圧の谷の影響で太平洋側や内陸などで雨が降った。なお、北部を中心に朝の冷え込みが強まり、最低気温がこの秋初めて氷点下となった。24日は晴れた所もあったが、強い寒気を伴った気圧の谷の通過で大気の状態が不安定となり、雨や雷雨となった所が多かった。また、旭岳や羊蹄山で初冠雪を観測した。25〜26日は高気圧に覆われ晴れたが、25日は初め東部で雨が降った。27日は、高気圧に覆われ概ね晴れたが、太平洋側から次第に曇った。28〜29日は低気圧の通過で雨が降り、太平洋側では大雨となった。総降水量は登別197ミリ等、太平洋側の多い所で170ミリ〜200ミリ。30日は高気圧に覆われ北部を中心に晴れたが、太平洋側では曇って雨の降った所もあった。

気候表
  気温偏差 階級 降水比 階級 日照比 階級
北海道22地点平均 -0.1℃ 56% 115%
太平洋側8地点平均 -0.1℃ 77% 109%
オホーツク海側4地点平均 +0.2℃ 56% 122%
日本海側10地点平均 -0.2℃ 39% かなり少 117%


II.病害虫発生概況

A.水稲

1.いもち病   発生量  やや多
各予察田における発生量は、穂いもちおよび節いもちともに平年より多かった。一般田では平年並の発生量であった。

地点 品種名 穂いもち(%) 節いもち(%) 平年数
病首率 病穂率 病茎率
本年 平年 本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 36.9 2.9 78.9 14.2 47.1 0.2 2
しまひかり 75.5 51.7 94.1 94.7 73.7 16.6 10
長沼町 きらら397 11.7 - 66.0 - 10.5 - 0
ほしのゆめ 50.9 - 97.6 - 64.3 - 0
(岩見沢市) きらら397 - 48.9 - 74.5 - 27.1 10
キタヒカリ - 16.8 - 40.6 - 10.3 10
比布町 きらら397 85.2 16.5 94.8 50.5 50.5 17.2 8
ほしのゆめ 95.7 25.0 100.0 65.0 92.3 42.8 6
注)9月2半旬の調査結果。

2.紋枯病   発生量   並
予察田における発生量は、大野町の「しまひかり」および長沼町では平年並、大野町の「きらら397」で多かった。
 
地点 品種 病茎率 平年数
9月2半旬 9月4半旬
本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 1.5 2.2 11.8 5.6 2
しまひかり 20.4 24.2 23.2 27.7 10
長沼町 きらら397 11.5 - - - 0
(岩見沢市) キタヒカリ - 13.7 - 19.2 10


3.セジロウンカ   発生量  少
各定点とも、予察灯による誘殺数、水田におけるすくい取り数ともに平年よりも少なかった。

月・半旬 成虫誘殺数 すくい取り成虫数
大野町 長沼町* 比布町 大野町 長沼町* 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I 4 9.9 0 (1.5) 0 0.9 2.5 43.4 1.3 (60.2) 0.0 25.8
9・II 0 12.2 0 (2.2) 0 0.4 7.5 58.4 0.0 (77.9) 0.0 30.3
9・III 2 11.6 0 (3.9) 0 0.0 10.0 40.7 0.0 (43.6) 0.0 21.0
9・IV 0 6.7 0 (10.5) 0 1.9 22.5 26.1 0.0 (32.5) 0.0 2.5
9・V 0 8.7 0 (8.9) 0 0.1 10.0 64.9 - (13.9) - 2.1
9・VI 1 2.9 0 (33.0) 0 0.0 7.5 169.6 - (1.6) - 10.5
*:長沼町の平年値は岩見沢市の値。

4.アカヒゲホソミドリカスミカメ   発生量  やや少
長沼町では、予察灯による誘殺数は平年並であったが、水田におけるすくい取り数は平年よりも少なかった。大野町および比布町における発生量は平年よりも少ない。

月・半旬 予察灯誘殺数 すくい取り成虫数
大野町 長沼町 比布町 大野町 長沼町* 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I 0 1.3 17 75.4 0 1.4 0 0.3 1.3 (4.4) 0.0 1.3
9・II 1 1.7 124 57.9 0 1.6 0 0.4 0.0 (6.6) 0.0 6.9
9・III 0 0.7 25 29.4 0 0.3 0 0.6 0.0 (1.9) 0.0 0.2
9・IV 0 0.5 1 13.5 0 0.0 0 0.5 0.0 (3.1) 0.0 0.4
9・V 0 0.3 0 8.2 0 0.1 0 1.0 - (0.7) - 0.4
9・VI 0 0.3 2 8.7 0 0.0 0 0.0 - (1.7) - 0.2
*:長沼町のすくい取り平年値は岩見沢市の値。

5.ニカメイガ    発生量  並
予察田における被害茎率は、大野町では2.0%(平年0.6%)と高く、比布町では平年同様被害が見られなかっ た。長沼町では被害茎率0.9%(岩見沢市の平年7.6%)と低かった。

B.豆類

1.大豆のべと病     発生量  並
長沼町の予察ほにおける発生量は平年並であった。
 
地点 品種名 発病度 平年数
9月2半旬
本年 平年
長沼町 キタホマレ 15.0 13.9 10
トヨムスメ 13.0 12.4 4

2.小豆のアズキノメイガ   発生量  並
長沼町の予察ほでは、被害莢率1.2%(平年0.9%)と平年並の発生量であった。

C.てんさい

1.褐斑病          発生量  少
予察ほにおける発生量は長沼町および芽室町で少、訓子府町で平年並であった。

地点 品種名 発病度 平年数
9月2半旬 9月4半旬 9月6半旬
本年 平年 本年 平年 本年 平年
長沼町 モノエースS - 41.2 - 50.6 - 63.8 7
めぐみ 35.6 68.3 52.8 86.4 50.8 84.6 2
アーベント 23.6 64.2 29.2 83.2 36.8 82.4 2
訓子府町 モノエースS 54.0 46.9 64.0 58.7 74.8 67.9 10
アーベント 31.2 - 37.2 - 39.6 - 0
芽室町 モノエースS 25.6 47.4 30.1 59.6 51.2 67.1 10

2.ヨトウガ      発生量  やや少
長沼町の予察ほにおける食害程度は平年並で、芽室町および訓子府町では平年よりも低かった。巡回調査によると、食害株率は昨年よりも低い地点が多い。

月・半旬 食害程度
長沼町 芽室町 訓子府町
本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I 47 48.9 27 41.4 28 32.1
9・II - 49.2 26 40.2 26 32.3
9・III 43 51.3 23 39.7 22 31.1
9・IV 46 51.4 22 40.7 24 34.8
9・V 43 53.8 22 39.9 23 43.4
9・VI 43 49.6 22 39.4 26 39.3

てんさいヨトウガ食害株率 巡回調査データ
支庁 普及センター 9月3半旬 支庁 普及センター 9月3半旬
後志 中後志(2) 3.0% 胆振 東胆振(2)
西胆振(2)
0%
2.0%
上川 士別(1) 78.0%
網走 清里(3)
美幌(3)
北見(4)
紋別(2)
湧別(3)
10.7%
16.8%
1.0%
27.1%
6.0%
十勝 十勝西部(3)
十勝中部(4)
十勝東部(4)
十勝東北部(4)
十勝南部(3)
十勝北部(3)
0%
3.8%
3.3%
0%
6.0%
7.7%
根室 北根室(2) 18.0%
()内は調査地点数

D.りんご

1.黒星病             発生量  並
長沼町の予察園における発生量は平年並であった。巡回調査によると一般園では全道的に平年並の少発生であった。

地点 品種 9月6半旬 平年数
病葉率(%) 発病度
本年 平年 本年 平年
長沼町 スターキングデリシャス 91.9 90.5 38.6 47.4 10
ふじ 92.6 85.9 39.5 37.4 5

2.斑点落葉病       発生量  やや多
長沼町の予察園における発生量はやや少なかった。巡回調査によると一般園ではやや多い発生であった。

地点 品種 調査枝 9月6半旬 平年数
病葉率(%) 平均病斑数
本年 平年 本年 平年
長沼町 スターキング
デリシャス
新梢 64.6 86.1 2.3 4.7 8
徒長枝 63.2 80.5 1.8 4.8 6

斑点落葉病病葉率(%) 
巡回調査データ
支庁 普及センター 9月3半旬
渡島 渡島中部(1) 42.0
後志 北後志(2) 12.0
空知 空知東部(3) 0.0
留萌 南留萌(2) 9.5
胆振 西胆振(1) 42.0
()内は調査地点数
 
3.モモシンクイガ        発生量  並〜やや多
長沼町の予察園ではフェロモントラップによる誘殺数は平年より多く、被害果率は8月末から100%と、平年(9月1半旬で78.2%)よりも高くなった。余市町および仁木町の予察園では、誘殺数は平年並からやや少ない。

4.キンモンホソガ       発生量  少
長沼町および仁木町の予察園ではフェロモントラップによる誘殺数は平年よりも少なく、余市町では平年並である。被害葉率は、各地点とも平年よりも低く推移している。

5.ハダニ類           発生量  少
長沼町の予察園ではリンゴハダニおよびナミハダニともに平年よりも少なかった。余市町および仁木町においては、リンゴハダニ成虫数は平年並で、ナミハダニは発生が見られなかった。

E.あぶらな科野菜

1.軟腐病             発生量  やや多
長沼町の予察ほにおける発生量は、だいこんでやや少なく(9月6半旬の病株率0%、平年2.4%)、はくさいでは多かった(9月6半旬の病株率67.5%、平年4.7%)。

2.コナガ          発生量  やや少
雄成虫のフェロモントラップによる誘殺数は、長沼町では平年よりも多かったが、大野町他の定点では平年よりも少なかった。幼虫の寄生数は長沼町および大野町とも平年よりも少ない。

月・半旬 フェロモンによる誘殺数 10株当たり幼虫数(キャベツ)
長沼町 大野町 長沼町 大野町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I 70 41.5 12 86.0 2 - - -
9・II 33 27.1 21 79.5 2 17.9 28 151.1
9・III 61 21.1 34 69.5 3 - - -
9・IV 36 16.0 27 65.3 8 9.7 64 112.6
9・V 24 16.6 13 55.5 4 - - -
9・VI 29 17.7 5 58.2 5 2.0 15 55.1

3.モンシロチョウ     発生量  やや少
幼虫の寄生数は長沼町では平年並で、大野町では平年よりも少なかった。成虫発生量は両定点とも平年よりも少ない。

月・半旬 見取り成虫数 10株当たり幼虫数(キャベツ)
長沼町 大野町 長沼町 大野町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I 3 9.5 - - 25 10.7 - -
9・II 1 10.8 1 4.8 34 14.9 19 64.2
9・III 1 5.2 - - 21 21.8 - -
9・IV 1 5.0 0 7.9 26 26.0 49 62.8
9・V 1 1.6 - - 15 21.4 - -
9・VI 2 0.5 0 5.6 15 28.3 16 37.4


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