平成14年度 病害虫発生予察情報第3号

4月月報

平成14年5月8日 北海道病害虫防除所
(連絡先:Tel.0123(89)2080

気象概況
A.秋まき小麦
B.りんご

コラム「コムギ褐色雪腐病」ってどんな病気?

I.気象概況

(札幌管区気象台発表 北海道地方気象速報)

──『高温・並雨・多照』暖気入りやすく、3か月連続の記録的高温──

低気圧が北海道の北を通過することが多かったため、南風が吹きやすく気温の高い日が多かった。このため、1946年の統計開始以来第2位の高温となり、2月から3か月連続して記録的高温となった他、地点別でも日本海側を中心に高温の記録を更新した。なお、上旬はオホーツク海側を中心に冷たい北東風の影響を受けた時期があった。降水量は北部で多かったが、その他の地域では少ない所が多く、日照時間は日本海側を中心に多かった。サクラの開花は、平年に比べて2週間前後早い所が多く、東部を除いて最早となっている。

上旬:1日は高気圧の張り出しで初め晴れたが、気圧の谷の接近で夜には北部や日本海側を中心に雨が降った。2日は初め気圧の谷の通過で東部では雨が降ったが、次第に高気圧に覆われオホーツク海側を除いて晴れた。3日は日中気圧の谷が通過し、太平洋側を中心に雨や雪が降ったが、北部では晴れた。4日は概ね晴れたが、弱い気圧の谷の影響で日本海側や内陸で雨の降ったところがあった。5〜6日は北海道の北に中心を持つ高気圧に覆われ概ね晴れたが、6日夜にはオホーツク海側で雪が降った。7〜9日は動きの遅い低気圧を含む気圧の谷の影響で雨の降った所が多く、北部やオホーツク海側では雪となった。10日は晴れた所も多かったが、気圧の谷の影響で北部や南西部では雨が降った。

中旬:11日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、初め気圧の谷の影響で日本海側では雨の降った所があり、南西部では雷を観測した。12日は気圧の谷の通過で曇り、太平洋側東部を中心に雨が降った。13日は高気圧に覆われ晴れた所が多かったが、低気圧の接近で南西部では雨が降った。14日は初め低気圧の通過で雨が降ったが、次第に高気圧に覆われ晴れた。15日は沿海州の低気圧からのびる前線の影響で、北部や南西部で朝晩を中心に雨が降ったが、南西部や内陸では日中晴れた。16〜17日は発達した低気圧が日本海を北東進して全道的に雨が降り、総降水量は南西部の多い所で60〜80ミリ。18日は発達した低気圧がオホーツク海に進み、北部を中心に雨や雪が降ったが、太平洋側では晴れた。また全道的に風が強く、広尾で最大瞬間風速32.5メートルを観測した。19〜20日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、19日は初め気圧の谷の影響で北部やオホーツク海側で雨が降った。

下旬:21日〜23日は東海上の高気圧の張り出しで概ね晴れたが、太平洋側を中心に曇りや霧雨となった所があった。なお、23日は内陸を中心に気温が上がり、今年初めての夏日となった所があった。24〜25日は寒冷前線が通過し全道的に雨が降り、総降水量は桧山や根室管内の多い所で60〜80ミリとなった。また、24日は札幌で最大瞬間風速29.1メートルを観測するなど、日本海側で強風による交通障害等が発生した。26〜29日は高気圧に覆われ全道的に晴れたが、内陸を中心に朝の冷え込みが強まり、最低気温は平年を下回った所が多かった。30日は低気圧が南海上を通過し、全道的に雨が降った。

気候表
  気温偏差 階級 降水比 階級 日照比 階級
北海道22地点平均 +2.4℃ かなり高 78% 109%
太平洋側8地点平均 +1.8℃ かなり高 59% 102%
オホーツク海側4地点平均 +2.6℃ かなり高 72% 109%
日本海側10地点平均 +2.9℃ かなり高 97% 114%


II.病害虫発生概況

A.秋播き小麦

1.雪腐病   発生量  少
予察ほにおける発生量は長沼町の「ホクシン」および芽室町で平年より少なかった。訓子府町では平年より多かった。一般ほでは、上川支庁管内で発生面積が平年並であった他は、全道的に少なかった。

予察ほにおける発生状況
地点 品種名   発病度 病原菌別発生割合(%) 根雪始め
融雪期
積雪期間
大粒 黒小 褐小 紅色 褐色 本年 平年
長沼 チホクコムギ 本年 30.0 0.0 5.00 55.0 40.0 0.0 11月30日

3月21日

111
12月7日

4月6日

120
平年 27.0 0.0 0.11 50.4 40.5 9.0
ホクシン 本年 5.0 0.0 0.00 60.0 40.0 0.0
平年 17.1 0.0 1.50 55.7 28.5 14.3
訓子府 チホクコムギ 本年 75.0 52.7 30.40 1.8 14.3 0.9 11月30日

4月3日

124
12月1日

4月9日

129
平年 41.0 9.4 11.10 2.9 74.6 2.0
ホクシン 本年 60.0 22.6 58.50 1.0 17.9 0.0
平年 25.0 41.3 32.23 9.0 17.4 0.0
芽室 チホクコムギ 本年 44.5 12.0 85.00 0.0 3.0 0.0 11月30日

3月31日

121
11月26日

4月10日

136
平年 89.0 11.5 83.10 3.2 2.1 0.0
ホクシン 本年 26.5 15.0 80.00 0.0 5.0 0.0
平年 78.7 20.1 73.80 5.0 1.2 0.0
注)大粒:雪腐大粒菌核病,黒小:雪腐黒色小粒菌核病,褐小:雪腐褐色小粒菌核病,
  紅色:紅色雪腐病,褐色:褐色雪腐病

秋まき小麦雪腐病支庁別調査結果(中間とりまとめ)
支庁 作付面積 発生面積率 被害面積率 菌種別発生割合(%)
本年 平年 本年 平年 大粒 黒小 褐小 紅色 褐色 スッポヌケ
石狩 6746 64.2 74.5 16.1 22.1 0.0 36.4 56.6 3.8 3.1 0.0
渡島 88 17.0 24.6 0.0 3.6 0.0 0.0 100.0 0.0 0.0 0.0
檜山 364 8.5 76.8 0.0 9.1 0.0 1.6 69.9 25.8 2.7 0.0
後志 1011 56.1 91.0 5.0 29.7 0.0 9.4 81.5 9.2 0.0 0.0
上川 9571 81.8 88.9 22.3 30.3 0.0 13.9 52.0 24.1 9.9 0.0
網走 23039 10.6 43.6 0.2 8.7 2.7 64.5 25.2 7.6 0.0 0.0
胆振 1748 3.4 26.2 0.0 4.8 0.0 0.0 100.0 0.0 0.0 0.0
日高 43.5 27.6 41.0 0.0 16.0 0.0 0.0 0.0 33.0 67.0 0.0
十勝 43796 19.7 31.4 0.6 5.7 3.8 87.7 2.6 0.4 0.0 5.5
全道計 86408 27.7 48.1 4.1 11.8  


2.赤さび病   発生期  早   発生量  並
予察ほでの発生は、長沼町では平年より1ヶ月以上も早くに初発が確認された。しかし、その後の病勢の進展は緩慢で下葉に僅かに病斑が認められる程度である。芽室町と訓子府町では未発生である。

予察ほにおける発生状況
地点 品種名   初発日 4月6半旬 平年数
病斑面積率
長沼 チホクコムギ 本年 4月6日 0.001 4*
平年 5月17日 0.002
ホクシン 本年 4月4日 0.010 4
平年 5月6日 0.030
訓子府 赤銹不知1号 本年 - 0.000 10
平年 6月11日 0.003
チホクコムギ 本年 - 0.000 10
平年 6月26日 0.000
ホクシン 本年 - 0.000 2
平年 6月8日 0.000
芽室 チホクコムギ 本年 - 0.000 2
平年 5月31日 0.000
ホクシン 本年 - 0.000 4
平年 5月21日 0.010
*長沼の初発期の平年数は「チホクコムギ」10年、「ホクシン」7年


3.うどんこ病   発生期  早   発生量  やや多〜多
長沼町・訓子府町・芽室町の予察ほでは、いずれも初発が確認された。発生期は長沼町で3〜4週間、訓子府町で10日前後、芽室町では数日、例年より早かった。発生量は、長沼町・訓子府町で多い。芽室町では平年並〜やや多い。発病のほとんどが下葉で、最上位葉とその直下の葉での発病は少ない。
本病は穂・止め葉(F葉)および止め葉の直下の葉(F-1葉)での発病が収量に影響を与える。このため「チホクコムギ」ではF-1葉展開期から、「ホクシン」では止め葉展開期からの薬剤防除を開始すると効果的である。小麦の生育が早まっていることから、防除適期を失しないようにほ場観察をしっかり行うことが望ましい。

予察ほにおける発生状況
地点 品種名   初発日 病斑面積率・4月6半旬 平年数
全葉 最上位葉 最上位葉の直下の葉
長沼 チホクコムギ 本年 4月15日 0.48 0.00 0.43 4*
平年 5月7日 0.00 0.00 0.00
ホクシン 本年 4月18日 0.28 0.00 0.19 4
平年 5月16日 0.00 0.00 0.00
訓子府 チホクコムギ 本年 4月25日 4.90 0.00 0.20 10
平年 5月4日 0.33 0.00 0.00
ホクシン 本年 4月26日 0.50 0.00 0.04 2
平年 5月8日 0.00 0.00 0.00
芽室 チホクコムギ 本年 4月26日 0.36 0.04 0.46 3
平年 4月28日 0.23 0.00 0.09
ホクシン 本年 4月29日 0.03 0.00 0.06 4
平年 5月3日 0.03 0.00 0.01
注)長沼の初発期の平年数は「チホクコムギ」10年、「ホクシン」7年

B.りんご

1.腐らん病   発生量  多
長沼町の予察園における腐らん病の発生は枝腐らん・胴腐らんとも平年並であった。普及センターからの報告によると、一般園では全道的に胴腐らんが多くなっている。空知東部および空知北部地区普及センター管内では平成11〜12年冬季の凍害の影響を引きずっている。また、全道的にわい化栽培樹が成木に達し、病原菌の侵入門戸が拡大したことも多発の要因と考えられる。りんごの生育が早いことにともなって、病斑の拡大も早まっている。
 
普及センター 発生量 発生部位 発生の特徴
北後志  
空知東部 やや多 胴、枝 再発病斑、枝先の枯れ込み
空知北部 「つがる」で多い
旭川 再発病斑、既発病の再発病
南留萌 胴、枝 近年、多発続き平年並に多い
西胆振   近年、多発続き平年並に多い


2.リンゴハダニ   孵化期  早   越冬卵量  少
1短果枝当たり越冬卵数は、長沼町で5.0個(平年:27.0個)、余市町・仁木町平均0個(平年:14.3個)と平年よりも少なかった。
長沼町における 越冬卵のふ化始めは4月25日(平年:5月11日)と、平年よりも早かった。

3.ハマキムシ類(ミダレカクモンハマキ)   孵化期  早   越冬量  少
ミダレカクモンハマキの越冬卵塊密度は、長沼町で5年枝1枝当り0.2個(平年:0.4個)、余市町で0個(平年:0.2個)、仁木町で0個(平年:0.02個)と少なかった。
長沼町における ふ化始めは4月22日(平年:5月9日)と平年よりも早かった。

4.キンモンホソガ   発生期  早
長沼町のフェロモントラップによる初誘殺は4月29日(平年:5月11日)と平年よりも早かった。

上記りんご害虫の初発期は、長沼町における果樹害虫定点調査(リンゴハダニ、ミダレカクモンハマキは1976年、キンモンホソガは1991年より)上の最早記録であった。りんごの生育期も平年よりほぼ同程度(10日前後)早まっているため、当面は通常通りりんごの生育期に合わせた薬剤散布で対応が可能である。


「コムギ褐色雪腐病」ってどんな病気?

小麦の雪腐病類は、それぞれの病害の生態や防除方法が異なるため、きちんと「病名=菌種」を区別し、自分の畑に発生している病気を把握しておく必要があります。
しかし、このとき一番区別しずらいのが、「褐色雪腐病」です。菌核を作らず、特徴的な色を呈するわけでもないので、非常に判断がむずかしい病気です。
最近、「褐色雪腐病」に関する新しい知見が得られましたので以下に紹介します。

発生生態
土壌中に生息するピシウム属菌が感染して発病する。

見分け方
融雪直後は葉がゆでたようになり暗緑色水浸状を呈する。
より正確に診断するためには、葉の組織内の卵胞子を観察することが望ましい。しかし、これには顕微鏡と多少の経験が必要である。
卵胞子は直径20μmほどのほぼ球形で、顕微鏡下で水泡と一見似ているが、ピンセット等でカバーガラスを押してみて、移動するようであればそれは水泡である。

多発条件
排水不良地・水田転換畑では多発しやすく、火山灰土地帯では発生が少ない。
土壌水分が多いと発生が多くなる。

発生地域
道央と上川支庁管内で多く、道東ではほとんど見られない。なかでも、空知および上川支庁管内で発生が多い。

被害
葉のみでなく茎まで侵されると被害になる。

品種間差
「ホクシン」「ホロシリコムギ」は「チホクコムギ」「タイセツコムギ」より本病に強い

耕種的防除
適期播種・排水対策


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