平成14年度 病害虫発生予察情報第2号

5月予報

平成14年4月23日 北海道病害虫防除所
(連絡先:Tel.0123(89)2080

1.水稲
2.小麦
3.とうもろこしおよび豆類
4.てんさい
5.りんご
予報対象外にした害虫

季節予報(付記)によれば、5月は天気は概ね周期的に変わり、平年同様に晴れる日が多い、気温は高く、降水量は平年並みと予報されています。
このようなことから多めの発生が予想される病害虫は、小麦の赤さび病りんごの腐らん病です。

A.水稲

ばか苗病  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 近年の発生量は、種子消毒の普及および苗床での発病苗の抜き取りにより少なく推移している。
    2. 前年の本田での発生も少なく種子の保菌率は低いと考えられる。
    3. 発生量は少なく平年並と予想される。


  2. 防除対策
    1. 発病苗は抜き取り、本田に発病苗を持ち込まないように注意する。


育苗期の細菌性病害(苗立枯細菌病・褐条病)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 褐条病の発生は種子予措条件(特に催芽)の影響を大きく受ける。
    2. 苗立枯細菌病の発生は育苗管理の影響が大きく、高温・多湿条件下で発病が助長される。
    3. 近年の発生量は 、種子消毒の普及、適切なハウス管理により両病害とも少なく推移しており、本年も発生量は少なく平年並と予想される。


  2. 防除対策
    1. ハウスの換気に注意し、出芽以降のハウス内温度を25℃以上にしない。
    2. 過湿をさけるため灌水量は必要最少限とし、晴天時の早朝に灌水する。
    3. 苗立枯細菌病は、灌水で隣接した育苗箱に移るので、発見後直ちに箱ごと処分する。
    4. 苗立枯細菌病に感染した苗、重症の褐条病苗(鞘葉より上位の葉まで発病している苗)は、本田に移植しても枯死するので移植しない。


苗立枯病  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 近年の発生量は適切なハウス管理により少なく推移しており、本年の発生量も少なく平年並と予想される。


  2. 防除対策
    1. 適切なハウス管理を行い、極端な低温・高温を避け、灌水量は必要最小限とし、晴天時の早朝に灌水する。
    2. ハウスの換気に努め、ムレ苗にならないように注意する。
    3. 発病を認めた場合には、まん延防止のため、防除基準に準拠して薬剤をかん注する。


イネミギワバエ  発生期:やや早  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 昨年は全道的にやや少なめの発生で被害はほとんど認められなかった。
    2. 第1回成虫は4月中旬から下旬に出現し、水田周辺のイネ科雑草で繁殖する。第2回成虫が移植後の本田に飛来する。
    3. 融雪期は全道的に早く、4月の高温経過から第1回成虫の発生期は平年より早まると見込まれる。
    4. 4月が高温経過であったことから第1回成虫の繁殖活動に好適であったと考えられるが、昨年の発生量からみて水田に飛来する量はほぼ平年並と見込まれる。


  2. 防除対策
    1. 移植前に水路などのイネ科雑草に卵や食害が目立った場合は、 イネミズゾウムシ、イネドロオイムシなどの初期害虫の防除を兼ねて育苗箱施用を実施する。
    2. 成虫は水辺を好み水面歩行できることから、深水にすると浮き葉が多くなり産卵が助長され被害が多くなるので、極端な深水は避ける。
    3. 5月下旬が低温に経過すると、水田における第2回成虫の産卵活動に好適な条件となるので注意する。


イネミズゾウムシ  発生期:やや早  発生量:やや少

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 前年の発生はやや少なめで、被害も少なかった。定点ほにおける昨年秋の新成虫の発生は大野町では平年並だったが、比布町では少なかった。
    2. 越冬成虫は5月の下旬頃より活動を始め、移植と同時に水田に侵入し、葉を食害する。
    3. 気温は4月中高めに経過し、5月も高いと予報されていることから、発生期はやや早く、発生量はやや少なめと予想される。


  2. 防除対策
    1. 6月上・中旬(成虫発生最盛期)の株あたり成虫0.5頭または食害株率70%により防除要否を判断することが可能である。
    2. 前年多発した地域では、イネミギワバエ・イネドロオイムシなどの初期害虫の防除を兼ねて育苗箱施用を行う。


イネドロオイムシ  発生期:やや早  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 前年の発生は日高支庁管内で多めとなったものの、全道的には平年並で、被害面積も小さかった。
    2. 年1回の発生で、越冬成虫が5月下旬頃から移植直後の水田に移動し、葉を食害すると共に卵塊を葉の表面に産み付ける。幼虫は葉を食害し、幼虫の被害が重要である。
    3. 気温は4月中高めに経過し、5月も高いと予報されていることから、発生期はやや早く、発生量は平年並みと予想される。


  2. 防除対策
    1. 6月に卵塊数を調査することにより、防除要否を判断することができる。
    2. 例年多発する地域では、初期害虫の防除を兼ねて育苗箱施用を行う。


ヒメトビウンカ  発生期:やや早  発生量:やや少

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 前年の発生は日高、桧山支庁管内で多かったものの他地域では少なく、被害面積も全道的に小さかった。
    2. 本種は畦畔などの雑草地で幼虫態で越冬し、5月中〜下旬に成虫となり水田に侵入し、その後秋まで水田内で増殖を繰り返す。
    3. 気温は4月中高めに経過し、5月も高いと予報されていることから、発生期はやや早まるが、発生量はやや少ないと予想される。


  2. 防除対策
    1. 稲縞葉枯病の常発地帯では、越冬幼虫の活動が活発化する4月下旬〜5月上旬にすくい取り調査を実施し、発生量を把握する。越冬幼虫が多い場合は畦畔防除に加えて必要に応じて育苗箱施用、茎葉散布を組み合わせる。
    2. 上川中央部では越冬前幼虫の保毒虫率が前年並だった。
越冬前幼虫の保毒虫率
(平成13年度秋期採集)
採集地点
(検定地点数)
保毒虫率(%)
平成12年 平成13年
上川農試(1) 1.2 0.8
旭川市(1) 0.2 1.7
東川町(1) 8.9 8.3
美瑛町(2) 0.0 1.9
当麻町(1) 4.4 5.0



B.小麦

うどんこ病 発生期:既発(早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 秋まき小麦の越冬状態は良好である。
    2. 15〜20℃で乾燥気味の気象条件は病原菌の分生胞子の形成に好適である。また、曇雨天が続いたり、厚まきや窒素肥料の過用による小麦の軟弱な生育は、本病の発生を助長する。
    3. 主要作付品種「ホクシン」はうどんこ病に抵抗性である。
    4. 5月の気温は高く、降水量は平年並と予報されていることから、発生量は少なく平年並と予想される。


  2. 防除対策
    1. 被害許容水準は、穂揃期〜開花期における止葉の病葉率で50%以下である。つまり、穂・止葉(F)・止葉の1枚下の葉(F-1)をうどんこ病から保護することが重要である。
    2. 主要品種「ホクシン」ではF葉展開期からの防除が効果的である。
    3. 本年は融雪期が早くこれまでの気温も高く経過し、小麦の生育は早いと考えられるので防除適期を失しないようにする。
    4. DMI剤の感受性の低下が確認された地域では、本剤散布は1回のみとする。


赤さび病  発生期:既発(早)  発生量:やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 秋まき小麦の越冬状態は良好である。
    2. 本病は高温少雨で発病が助長される。特に気温に非常に大きく影響を受け、高温で急激に発病が増加する。
    3. 既に平年よりかなり早く初発が確認されている。
    4. 主要品種が「ホクシン」に置き換わって以来、近年徐々に発生が目立ってきている。
    5. 5月の気温は高く、降水量は平年並と予報されていることから、発生量はやや多くな ると予想される。


  2. 防除対策
    1. 「ホクシン」は本病に弱いため発生状況に注意し、止葉展開期から穂ばらみ期にかけて茎葉散布を行う。
    2. 抵抗性「中」以上の品種では、出穂前の防除は不要で赤かび病との同時防除で対応が可能である。
    3. 本年は融雪期が早くこれまでの気温も高く経過し、小麦の生育は早いと考えられるので防除適期を失しないようにする。


眼紋病  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 秋まき小麦の越冬状態は良好である。
    2. 5月の気温は高く、降水量は平年並と予報されている。
    3. 発生量は平年並と予想されるが、連作畑・転換畑では注意が必要である。


  2. 防除対策
    1. ほ場の排水を良好にする。
    2. 本病にかかると倒伏しやすくなるため、窒素質肥料の追肥は適正な量を行う。
    3. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。


ムギキモグリバエ  発生期:早  発生量:やや少

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 近年少発傾向に推移しており、前年は上川支庁を除き全道的に発生は少なく、被害も全道的に少なかった。
    2. 加害植物の茎内で越冬した幼虫は、4月下旬頃から蛹に、5月下旬頃から成虫となり、麦の葉舌付近に産卵する。孵化した幼虫は葉鞘内に侵入し内部を食害する。
    3. これまでの高温経過から発生期は早いと予想される。越冬密度が低いことから、秋まき小麦の被害はやや少ないものと予想される。
    4. 春まき小麦のは種は早まり、被害回避につながることが期待されるため、春まき小麦の被害もやや少ないものと見込まれる。


  2. 防除対策
    1. 春まき小麦では、遅播きで生育初期に被害を受けると異常分げつにより無効茎が増加するので、早期は種に努める。
    2. 多発地帯では、5月下旬の産卵初期から茎葉散布を行う。


C.とうもろこし及び豆類

タネバエ  発生量:やや少

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 成虫は、畑を耕起した直後の湿り気を帯びた土壌や分解不十分な有機物の臭気などに引き寄せられ、土壌の間に点々と卵を産みつける。
    2. は種〜発芽の間に雨が多く土壌水分が多いときに被害が増加する傾向がある。
    3. 気温は4月中高めに推移し、5月も高いと予報されていることから、発芽は順調に進むことが期待される。そのため発生量はやや少ないと予想される。


  2. 防除対策
    1. 有機質肥料の施用は、成虫を誘引し被害を多くするので避ける。
    2. 牧草の後作等未分解有機質のすき込み直後のは種は被害が多くなるので、十分分解が進んでからは種する。


D.てんさい

テンサイトビハムシ  発生期:やや早  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 年1回の発生で、ササ自生地の落葉の間などで成虫越冬し、5月に入り気温が15℃以上の晴天の日に行動が活発となり、てんさい・シロザ・ギシギシなどに飛来する。
    2. 5月の気温は高いと予報されていることから、越冬成虫の活動開始時期はやや早まると予想される。
    3. 前年春季の予察ほにおける発生量は少なめで、産卵期の6月の気温も変動が大きかったことから、越冬密度は高まってはいないものと思われる。


  2. 防除対策
    1. 越冬地となるササの自生地が近くにあると被害が多くなる。
    2. 多発地帯では、育苗ポット灌注または移植直後、発芽直後(直播栽培)からの早期防除が効果的である。



E.りんご

モニリア病  発生期:(葉腐れ やや早)、(花腐れ 早)  発生量:やや少

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. りんごの生育はやや早い地域が多いと思われるため、発生期は葉腐れでやや早い、花腐れで早いと予想される。
    2. 前年の実腐れはほとんど認められず越冬菌核は少ないと考えられる。
    3. 本年は融雪が早く、4月中旬までの気温もかなり高く経過し、園地の乾きが促進されたため、子のう盤の形成には不適であったと考えられる。
    4. 5月の気温は高く、降水量も平年並と予報されているため、発生量はやや少ないと予想される。


  2. 防除対策
    1. 本病は展葉の初期から発病するので、発芽期と発芽10日後の防除が重要である。
    2. 融雪水が停滞する場所は、溝切りを行い表面水の早期除去により園地の乾燥を図る。
    3. 葉腐れ・花腐れ被害葉の摘み取りを行い、実腐れ・株腐れの発病防止に努める。
    4. 葉腐れの発生が見られた場合は、開花直前の黒星病防除に実腐れにも効果の高い薬剤を選択する。
    5. 本病は定着性の強い病害で園地間差が大きく、常発園以外では急に多発することはない。


黒星病  発生期:やや早 発生量:やや少

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. りんごの生育は早い地域が多いと思われるため、発生期はやや早いと予想される。
    2. 近年少発生に推移しているので、伝染源密度は低いと考えられる。
    3. 本病は開花直前からの多雨、夏の冷涼多雨で多発する。
    4. 5月の気温は高く、降水量は平年並と予報されていることから、発生量はやや少ないと予想される。


  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠し、初期防除(開花前から)に努める。
    2. 発生園では防除間隔は10日以上あけない。
    3. 散布量不足や散布むらに注意する。
    4. 特に前年に多発した園では発生が多くなることが予想されるので、防除適期を失しないように注意する。


腐らん病  発生量:やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 冬期間厳しく冷え込んだ日が少なく感染は少なかったと考えられるが、近年多発生に推移しており、罹病部の除去・薬剤塗布が追いつかない状況である。また、再発病斑も多く、発生量はやや多いと予想される。


  2. 防除対策
    1. 発見後直ちに被害部は完全に削り取り薬剤を塗布する。7月になると病斑を発見しづらくなるので削り取りは早期に行う。
    2. 除去した被害部および剪定枝は放置せずに処分する。剪定枝は健全であっても園内に放置しない。
    3. 発芽期以降も胞子は飛散しているため、落花20日後までの他病害の防除には腐らん病に効果のある薬剤を選択する。薬剤散布にあたっては、薬剤が枝幹に十分に付着するように注意する。
    4. 病斑を除去してもその周辺から再発する可能性があるので、その後も気をつけて観察を続ける。


リンゴハダニ  発生期:早 発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 前年の発生量は、平年並だった。
    2. 本種は、越冬卵が5月上旬頃より孵化し始め、中旬に孵化最盛期となり、6月上旬に花そう葉で発生が目立つようになる。
    3. これまでの気象経過から、孵化期は平年より早くなると想定される。発生量は、前年秋の発生が平年並だったことから平年並と予想される。


  2. 防除対策
    1. 同一系統の薬剤を使用すると薬剤抵抗性の発達が急速に発達するので、異なる系統の薬剤のローテーション散布を実施する。
    2. 開花期の防除には訪花昆虫に影響の少ない薬剤を選択する。


ハマキムシ類  発生期:早 発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 前年は開花期の花そう被害は平年並だったが、夏場の新梢被害は平年より少なかった。
    2. 幼虫で越冬するリンゴコカクモンハマキなどは、4月下旬より活動を始め芽や葉、新梢先端を食害し、卵越冬のミダレカクモンハマキなどでは、5月上旬から孵化し葉を綴り合わせて被害を出す。
    3. 気温は4月中高めに経過し、5月も高いと予報されていることから、発生期は早まるものと思われる。発生量は平年並が予想される。


  2. 防除対策
    1. 開花期の防除にはBT剤、IGR剤など訪花昆虫に影響の少ない薬剤を選択する。

予報対象外にした害虫

小麦のムギクロハモグリバエ
本種による被害は、切葉試験による被害解析により、被害葉率による被害許容水準が、

春まき小麦12.1%、秋まき小麦15.7%

とされました。
このような被害に至る場合、幼虫による加害に先立つ成虫による食痕葉率が50%を上回ることが予想されます。これまでの無防除発生予察ほ場における調査でも、このような被害は二十年に一度といったような低い頻度でしか観察されていません。そのため、通常の発生量では本種に対する防除は不要であると結論づけられました。
この結果に基づき、本年より本種は予察情報の対象からはずされました。

水稲のイネハモグリバエ
本種は稲に対してムギクロハモグリバエと類似の加害を行います。本種の発生量も近年極めて少ない状態が続いていたことから、ムギクロハモグリバエと同様に予察情報の対象からはずすことになりました。


付記

北海道地方 3か月予報

(5月から7月までの天候見通し)

平成14年4月22日
札幌管区気象台発表

3か月(5〜7月)の気温の各階級の確率(%)

[気温]

北海道地方
20 40 40
 
低い
平年並
高い

3か月平均気温は、平年か高い可能性が大きく、その確率は40%です。

可能性の大きな天候見通し

5月
天気は概ね周期的に変わり、平年同様に晴れる日が多いでしょう。気温は高い見込みです。
6月
天気は周期的に変わるでしょう。一時、低気圧や前線の影響でぐずつく時期がある見込みです。気温は平年並の見込みです。
7月
天気は周期的に変わるでしょう。後半は太平洋高気圧に覆われて晴れて暑い日がある見込みです。気温は平年並の見込みです。

3か月間降水量は平年並でしょう。

要素 5月 6月 7月
気温 高い 平年並 平年並
降水量 平年並 平年並 平年並



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