平成14年度 病害虫発生予察情報第1号

長期予報

平成14年3月26日 北海道病害虫防除所
(連絡先:Tel.0123(89)2080


平成14年度に多発生が予想される病害虫
平成14年度の病害虫の発生予想
1.水稲
2.麦類
3.豆類
4.ばれいしょ・てんさい・たまねぎ
5.りんご
6.あぶらな科野菜

札幌管区気象台発表の3月11日付けの暖候期予報は以下のとおりです。

平成14年度暖候期予報
(4月から9月までの天候見通し)

平成14年3月11日
札幌管区気象台発表

<夏(6〜8月)の気温の各階級の確率(%)>
[気 温]
北海道地方
30 50 20
高い 平年並 低い

夏平均気温(6〜8月)は、「平年並」の可能性が大きく、その確率は50%です。

<可能性の大きな天候見通し>
春(4〜5月)
平年と同様に、高気圧と低気圧が交互にとおり、天気は数日周期で変わるでしょう。この期間の気温は高いが、気温の変動が大きい見込みです。この期間の降水量は平年並でしょう。
夏(6〜9月)
天気は概ね周期的に変わりますが、6月から7月にかけてはオホーツク海高気圧や前線の影響を受け、天気がぐずつき低温の続く時期があるでしょう。その後は、平年と同様に太平洋高気圧に覆われ晴れる日が多いですが、寒気や前線の影響を受ける時期があるでしょう。
この期間の降水量は平年並でしょう。

暖候期予報および近年の発生状況より平成14年度に発生量が「やや多〜多」になると予想される病害虫は以下のとおりです。
1.水稲のいもち病(発生量:やや多)
2年連続で多発し、水田内および周辺に伝染源が多い。また6月から7月にかけて天気がぐずつき低温の続く時期があり、その後は、寒気や前線の影響を受ける時期があると予報されていることから、発生量はやや多いと予想される。初発予測システムBLASTAMを参考にし、早期発見に努める。

2.水稲のイネドロオイムシ(発生量:やや多)
5月の気温は高いと予報されていることから、越冬成虫の水田への侵入は平年よりもやや早いと予想される。6月から7月にかけては天気がぐずつき低温の続く時期があると予報されていることから、成虫の産卵期間がのび、幼虫の加害も長引き被害が多くなる可能性があるので、卵塊調査を実施して適正な防除に努める。卵塊調査には「北の虫見番」を活用する。

3.小麦の赤さび病(発生量:やや多)
融雪が平年より早いことから雪腐病の発生が少ないと予想され、越冬茎葉量が多く、発生期は早いと思われる。4〜5月は気温が高く、降水量は平年並と予報されていることから、発生量はやや多いと予想される。「ホクシン」では止葉抽出期〜穂ばらみ期および開花始の2回、「チホクコムギ」では開花始に1回薬剤防除を行う。

4.大豆のべと病(発生量:やや多)
2年連続で多発した。夏(6〜9月)の天気は概ね周期的に変わり、6月から7月にかけては、天気がぐずつき低温の続く時期がある。8月後半から9月にかけての残暑は平年並であり、7月〜9月は平年どおり局地的大雨が発生する時期があると予報されていることから、発生量はやや多くなると予想される。
汚染種子が一次伝染源として重要であるので、適正な種子更新を行い、健全な種子を用いる。抵抗性弱の黄・青大豆(「トヨコマチ」「トヨムスメ」「トヨスズ」「音更大袖」)では開花始までに要防除水準(上位葉の病斑面積率が2.5%=病斑数30個/葉) に達した場合1〜2回、黒大豆では要防除水準に達しない場合でも1〜2回、薬剤防除を行う。

5.小豆の茎疫病(発生量:やや多)
近年多発が続いている。6月から7月にかけて、天気がぐずつき低温の続く時期があり、降水量は平年並と予報されていることから、発生量はやや多いと予想される。薬剤防除が難しい病害であり、高水分条件下の土壌で多発しやすいため、排水対策など耕種的防除を併用する。

6.菜豆の菌核病・灰色かび病(発生量:やや多)
6月から7月にかけて、天気がぐずつき低温の続く時期があり、降水量は平年並と予報されていることから、発生量はやや多いと予想される。
開花始後5〜7日目に第1回散布を行い、その後10日間隔で2〜3回散布する。十勝支庁管内でフルアジナム剤に対して灰色かび病の耐性菌が認められている。このような地域では、第1回目の散布はジカルボキシイミド系剤(プロシミドン水和剤・イプロジオン水和剤)またはジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤が有効で、菌核病の発生が多い場合は前者の効果が高く、後者は菌核病の発生が少なく、炭そ病が多いほ場で有効である。

7.ばれいしよの疫病(発生量:やや多)
6月から7月にかけて、天気がぐずつき低温の続く時期があり、降水量は平年並と予報されていることから、発生期はやや早く発生量はやや多いと予想される。初発予測システムFLABSを活用して、初発の早期発見・早期防除を行う。 

8.りんごの腐らん病(発生量:やや多)
今年は厳しく冷え込んだ日が少なく、感染は少なかったと思われるが、近年多発生で推移しており、再発病斑なども多く、発生量はやや多いと予想される。発芽前の薬剤散布、被害部の削り取りや薬剤の塗布などを徹底する。

9.りんごのキンモンホソガ(発生量:やや多)
昨年の発生量は全道的にやや多かったことから、越冬蛹量は平年よりもやや多いと予想される。5月の気温は高いと予報されていることから、第1回成虫の初発は早く、産卵活動は活発で次世代の発生量も多くなると予想される。

10.たまねぎの軟腐病(発生量:やや多)
6月から7月にかけて、天気がぐずつき低温の続く時期があり、降水量は平年並と予報されていることから、発生量はやや多いと予想される。

11.あぶらな科野菜の軟腐病(発生量:やや多)
2〜3年多発しているため、土壌中の被害残さに伝染源が存在すると思われ、発生量はやや多いと予想される。高温多雨の条件下で多発し、特に7月中旬以降に収穫する作型で発生しやすい。だいこんでは、は種後25〜30日目が特に感染しやすいため、この時期の薬剤防除が重要である。また、窒素施用量を0.2〜0.4kg/a(肥沃土では0.1kg/a以下でもよい)に抑制し、抵抗性品種(「YR太鼓判」「夏つかさ」「改良夏元太」「貴宮」「T-411」「献夏青首」など)を栽培することにより、発生をかなり軽減できる。

12.だいこんのキスジトビハムシ(発生量:やや多)
近年多発生が続いていることから、越冬成虫量は多いと考えられる。5月の気温は高いと予想されていることから、越冬成虫の活動は活発で、被害は多めになると予想される。


平成14年度の病害虫の発生予想

注1)近年の発生状況:平年値(過去10年間の平均値)と比較した値。
   ◎:やや多〜多  □:並  △:やや少〜少
 2)初発期:予察ほの平年値。*:予察ほで調査していないため、一般的な値。

1.水稲
作物名 病害虫名 近年の発生状況 初発期 発生予想(平年対比)
9 10 11 12 13 発生期 発生量
水稲 ばか苗病 - -
苗立枯病(細菌病含) - -
縞葉枯病 6.V* やや早 やや少
いもち病(葉) 7.IV やや多
いもち病(穂) 8.III やや多
紋枯病 8.II
イネミギワバエ 6.II やや早
イネミズゾウムシ 6.I やや早 やや少
ヒメトビウンカ 6.I やや早 やや少
イネドロオイムシ 6.I やや早 やや多
フタオビコヤガ 5.VI やや早〜並
アカヒゲホソミドリカスミカメ 6.V やや早
ニカメイガ 6.VI

2.麦類
作物名 病害虫名 近年の発生状況 初発期 発生予想(平年対比)
9 10 11 12 13 発生期 発生量
麦類 赤さび病 5.III やや多
うどんこ病 5.II やや少
赤かび病 - -
眼紋病 - -
ムギキモグリバエ 5.VI やや早

3.豆類
作物名 病害虫名 近年の発生状況 初発期 発生予想(平年対比)
9 10 11 12 13 発生期 発生量
大豆 べと病 7.IV やや早 やや多
わい化病 6.VI* やや早
食葉性鱗翅目幼虫 6.I やや早
マメシンクイガ 8.II
タネバエ - -
小豆 菌核病 8.I*
灰色かび病 8.I*
茎疫病 - - やや多
食葉性鱗翅目幼虫 6.I やや早
菜豆 菌核病 7.VI やや多
灰色かび病 7.V やや多
黄化病 - やや早
タネバエ - -

4.ばれいしょ・てんさい・たまねぎ
作物名 病害虫名 近年の発生状況 初発期 発生予想(平年対比)
9 10 11 12 13 発生期 発生量
ばれいしょ 疫病 7.III やや早 やや多
軟腐病 7.II*
黒あし病 6.I*
そうか病 - -
粉状そうか病 - -
アブラムシ類 6.II やや早
てんさい 褐斑病 7.V
根腐病 6.VI*
テンサイモグリハナバエ 6.II やや早 やや少
ヨトウガ(第1回) 6.I やや早
ヨトウガ(第2回) やや早
たまねぎ 白斑葉枯病 6.VI やや早
軟腐病 6.VI* やや多
タマネギバエ - -
ネギアザミウマ 6.III やや少

5.りんご
作物名 病害虫名 近年の発生状況 初発期 発生予想(平年対比)
9 10 11 12 13 発生期 発生量
りんご モニリア病 花◎ 5.IV やや少
実△
黒星病 6.I やや早
斑点落葉病 6.VI
腐らん病 - - やや多
ハマキムシ類 5.I やや早
モモシンクイガ 6.V やや早 やや少
キンモンホソガ 5.II やや早 やや多
ハダニ類 5.I やや早

6.あぶらな科野菜
作物名 病害虫名 近年の発生状況 初発期 発生予想(平年対比)
9 10 11 12 13 発生期 発生量
あぶらな科野菜 軟腐病(だいこん) 7.I* - やや多
軟腐病(はくさい)
コナガ(キャベツ) - -
ヨトウガ(キャベツ) 6.I やや早
キスジトビハムシ(だいこん) - - やや多



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