平成13年度 病害虫発生予察情報 第17号

9月月報

平成13年10月11日 北海道病害虫防除所

(連絡先:予察課 Tel.01238(9)2080(内)323

     Fax.01238(9)2082)

 


気象概況
A.水稲
B.豆類
C.てん菜
D.りんご
E.あぶらな科野菜

I.気象概況

(札幌管区気象台発表 北海道地方気象速報)

──『低温・多雨・寡照』秋雨前線と台風により前半に大雨、下旬に強い寒気──

この期間は、9日〜12日にかけ、秋雨前線や台風第15号の影響で、全道的に大雨となり、総降水量は多い所で300ミリ近くとなり、各地で被害が発生した。気温は、下旬に強い寒気が周期的に入り、月平均でも低かった。特に、函館では22日に初霜を観測し、103年ぶりに最早の記録を更新した。日照時間は 、中旬はかなり少なく、月平均でも少なかった。

上旬:1日〜2日は気圧の谷の影響で、曇りや雨となった所が多かった。3日〜5日は北海道付近を通過した高気圧に覆われ概ね晴れたが、太平洋側の一部で曇りや雨となった。6日は、低気圧や気圧の谷の影響で太平洋側を中心に雨が降ったが、その後、高気圧に覆われ概ね晴れた。7日は前線を伴った低気圧の影響で全道的に雨が降り南西部では大雨となった。降水量は八雲85ミリ、江差83ミリ等、多い所で60〜90ミリ。8日は気圧の谷の影響で曇りや雨となったが、日本海側では晴れた所があった。9日〜10日は活発的な秋雨前線の影響で全道的に雨が降り、北部や日本海側を中心に大雨による浸水や交通障害等が発生した。日降水量は9日深川15ミリ、10日美国156ミリ、名寄市ピヤシリ山146ミリ等。

中旬:11日〜12日は活発な秋雨前線と12日に三陸沖を北東進した台風第15号の影響で全道的に大雨となり、各地で土砂崩れや浸水、冠水、交通障害等が発生した。日降水量は11日新冠町新和240ミリ、森236ミリ、12日根室市厚床118ミリ等。なお、9日〜12日の総降水量は一般に100〜150ミリ、多い所では平取町仁世宇289ミリ、占冠281ミリ、深川261ミリ等、300ミリ近くに達した。また、12日の最大風速はえりも岬29メートル。13日は気圧の谷の影響で太平洋側を中心に曇りや雨となった。14日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、南西部では気圧の谷の接近で雨の降った所があった。15日〜16日は前線や気圧の谷の影響で全般に曇って、北部や太平洋側では所により雨が降った。17日〜18日は前線の通過で17日には北部を、18日には南西部を中心に雨が降り、日降水量は17日遠別56ミリ、18日今金45ミリ等。19日は気圧の谷の通過後、寒気が入った影響で、北部や内陸部を中心に曇りや雨となった。20日は高気圧に覆われ晴れた所があったが、夜には気圧の谷の接近で北部から雨が降り出し雷雨の所があった。また。旭岳で初冠雪を観測した。

下旬:21日は気圧の谷の通過後、11月上旬並の強い寒気が入って北部や日本海側を中心に雨やひょうが降った。また、最低気温は上士幌町糠平-0.4℃と今季初の氷点下となり、暑寒別岳で初冠雪の最早を記録した。22日は高気圧の張り出しで概ね晴れたが、寒気の影響で日本海側を中心に雨の降った所があった。また、厳しい冷え込みとなり、函館では初霜の最早(1898年以来103年ぶり更新)を、手稲山・樽前山では初冠雪の最早を記録した。23日は移動性高気圧に覆われ晴れたが、内陸部では明け方冷え込み、帯広・倶知安で初霜を観測した。24日〜25日は初め太平洋側では晴れたが、前線の通過で北部や日本海側を中心に雨が降った。26日は移動性高気圧に覆われ概ね晴れた。27日は初め晴れた所もあったが、寒冷前線の接近で昼過ぎから北部を中心に雨が降り出し、日本海側では雷雨の所があった。28日〜29日は前線の通過後に上空に強い寒気が入って日本海側を中心に曇って雨や雷雨の所があったが、その他は概ね晴れた。なお、29日は東部の内陸部で冷え込み最低気温は陸別-2.4℃等。30日は移動性高気圧に覆われ概ね晴れたが、寒気の影響で日本海側では弱い雨の所があった。

気候表
  気温偏差 階級 降水比 階級 日照比 階級
北海道22地点平均 -0.8℃ 151% かなり多 92%
太平洋側8地点平均 -0.7℃ 119% 89%
オホーツク海側4地点平均 -1.2℃ 198% かなり多 92%
日本海側10地点平均 -0.8℃ 157% かなり多 95%


II.病害虫発生概況

A.水稲

1.いもち病(穂)   発生量  やや多〜多
予察田における発生量は、大野町で平年並、岩見沢市・比布町では多であった。

地点 品種名 病穂率(%) 病茎率(%) 平年数
枝梗いもち 穂首いもち 穂いもち 節いもち
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 13.8 - 2.9 - 14.2 - 0.2 - 1
しまひかり 96.0 93.0 54.1 50.6 96.0 95.1 13.0 16.1 10
岩見沢市 キタヒカリ 22.9 24.2 77.1 43.5 100.0 67.7 61.2 22.3 10
きらら397 25.7 21.3 74.3 9.3 100.0 30.6 30.1 7.3 10
比布町 きらら397 41.4 36.0 53.7 10.3 95.1 43.1 78.4 7.0 7
ほしのゆめ 74.3 31.5 25.7 24.8 100.0 56.3 96.7 29.3 5
注)9月2半旬の調査結果。

2.紋枯病   発生量   やや少
予察田における発生量は大野町でやや少であった。

3.セジロウンカ   発生量  並
大野町および岩見沢市の予察田における成虫発生量は平年並であった。

月・半旬 成虫誘殺数 すくい取り成虫数
大野町 岩見沢市 比布町 大野町 岩見沢市 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I 2 10.5 0 1.6 0 1.0 95.0 58.4 30.0 68.5 0.0 29.5
9・II 0 14.8 4 1.8 0 0.4 115.0 61.5 91.7 77.1 17.5 32.4
9・III 2 11.8 5 3.4 0 0.0 80.0 50.9 65.0 39.8 - 21.0
9・IV 1 6.6 0 10.5 0 2.1 75.0 20.9 26.7 34.0 - 2.5
9・V 43 4.9 1 8.8 0 0.1 60.0 66.3 25.0 12.9 - 2.1
9・VI 0 3.2 0 29.7 0 0.0 35.0 166.7 - 2.9 - 3.0
注)すくい取り数は20回振り×5日分の合計値。

4.アカヒゲホソミドリカスミカメ   発生量  やや少
岩見沢市の予察田における発生量は平年よりもやや多かったが、大野町では水田内の発生は見られなかった。

月・半旬 すくい取り成虫数 すくい取り幼虫数
大野町 岩見沢市 比布町 大野町 岩見沢市 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I 0 7.0 8.3 4.1 1.7 1.2 0 7.5 15.0 19.8 0.0 5.1
9・II 0 2.8 18.3 4.8 0.0 9.2 0 7.5 26.7 10.4 0.0 8.5
9・III 0 2.8 3.3 1.6 - 0.3 0 3.8 18.3 3.6 - 1.2
9・IV 0 1.0 0.0 3.1 - 0.9 0 0.0 0.0 4.4 - 1.7
9・V 0 2.5 0.0 0.8 - 0.8 0 1.3 6.7 2.9 - 5.0
9・VI 0 1.5 - 1.4 - 0.6 0 0.0 - 3.0 - 3.9
注)すくい取り数は20回振り×5日分の合計値。

5.ニカメイガ    発生量  少
大野町および比布町の予察田では被害茎は見られなかった。岩見沢市では被害茎率1.0%(平年6.6%)と平年よりも少なかった。

B.豆類

1.大豆のべと病     発生量  やや少
長沼町の予察ほでは9月に入って病勢が急激に衰え、少発生であった。

2.大豆のわい化病    発生量  少
長沼町の予察ほにおける発生量は少であった。

3.小豆のアズキノメイガ   発生量  やや少〜並
長沼町の予察ほでは被害株率10.3%(平年8.6%)、被害莢率0.75%(平年0.9%)と平年並で、芽室町では被害株率6.0%(平年:9.8%)、被害莢率0.3%(平年:0.6%)と平年よりもやや少なかった。

C.てんさい

1.褐斑病          発生量  並
予察ほにおける発生量は長沼町で平年並、訓子府町でやや多、芽室町でやや少であった。

地点 品種名 発病度 平年数
9月2半旬 9月4半旬 9月6半旬
本年 平年 本年 平年 本年 平年
長沼町 モノエースS - 41.5 - 50.6 - 63.8 8
めぐみ 46.3 90.4 72.8 100.0 70.0 99.2 1
アーベント 49.6 78.8 73.2 93.2 67.2 97.6 1
訓子府町 モノエースS 56.0 45.9 79.2 56.4 84.8 66.0 9
芽室町 モノエースS 38.1 48.9 47.5 62.0 - 69.6 10

2.ヨトウガ      発生量  並
長沼町・芽室町・訓子府町の予察ほにおける食害程度は平年並であった。巡回調査によると、上川・網走・根室支庁管内の一部で食害株率が高くなっている。

月・半旬 食害程度
長沼町 芽室町 訓子府町
本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I 43 48.8 - 40.0 18.0 33.1
9・II 45 49.3 36 38.3 17.0 33.1
9・III 51 51.0 40 35.6 20.5 32.2
9・IV 52 51.0 42 38.7 23.0 34.9
9・V 54 53.0 45 35.2 29.0 45.8
9・VI 51 49.2 45 36.5 37.0 37.9

てんさいヨトウガ食害株率 巡回調査データ
支庁 普及センター 9月3半旬 支庁 普及センター 9月3半旬
石狩 石狩南部 1.3 胆振 東胆振
西胆振
3.0
5.0
後志 南羊蹄 11.7
上川 士別
上川北部
大雪
富良野
100.0
0.0
2.7
29.3
十勝 十勝西部
十勝中部
十勝東部
十勝東北部
十勝南部
十勝北部
2.3
1.5
4.8
0.3
1.3
0.4
網走 網走
清里
美幌
北見
紋別
12.4
26.3
1.0
3.5
67.0
釧路 釧路北部 0.0
根室 北根室 25.0

D.りんご

1.黒星病             発生量  並
長沼町の予察園における発生量は「スターキングデリシャス」で平年よりやや多く、「ふじ」ではやや少なかった。巡回調査によると一般園では全道的に平年並の少発生であった。

地点 品種名   9.VI 平年数
病葉率(%) 発病度 
長沼町 スターキング
デリシャス
本年 91.0 60.6 10
平年 90.4 44.8
ふじ 本年 75.2 29.2 4
平年 88.5 39.4

2.斑点落葉病       発生量  並〜やや多
長沼町の予察園における発生量は平年並であった。巡回調査によると渡島・留萌および胆振支庁管内の一般園でやや多発生であった。

地点 品種 調査項目 調査枝 9月2半旬 9月4半旬 9月6半旬 平年数
本年 平年 本年 平年 本年 平年
長沼町 スターキング
デリシャス
病葉率 新梢 78.8 75.1 92.6 79.9 89.7 85.4 7
徒長枝 77.1 76.6 75.9 78.4 76.2 81.4 5
ふじ 平均
病斑数
新梢 2.63 4.29 3.68 4.62 2.60 5.09 7
徒長枝 2.34 4.26 2.46 4.09 2.12 5.41 5

3.モモシンクイガ        発生量  並
長沼町の予察園における産卵数は平年よりも多めであったが、フェロモントラップによる誘殺数は平年並であった。余市町・仁木町の一般園でのフェロモントラップ誘殺数は平年並で、増毛町ではやや少なかった。

4.キンモンホソガ       発生量  並〜やや多
長沼町の予察園における被害葉率およびフェロモントラップにおける誘殺数は平年並に推移している。仁木町の一般園におけるフェロモントラップによる誘殺数は平年並で、増毛町では平年よりも多い。余市町では誘殺数・被害葉率とも平年より多く推移している。

5.ハダニ類           発生量  少
長沼町の予察園における発生量はリンゴハダニ・ナミハダニとも平年よりも少なかった。巡回調査によると、余市町・仁木町の一般園における発生量は両種共にごく少なかった。

E.あぶらな科野菜

1.軟腐病             発生量  並
長沼町の予察ほでは、だいこん・はくさいとも平年並の発生量であった。

2.コナガ          発生量  並
大野町および長沼町のフェロモントラップによる誘殺数は平年並であった。

月・半旬 フェロモンによる誘殺数 10株当たり幼虫数
大野町 長沼町 大野町 長沼町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I 42 38.1 26 85.4 - - - -
9・II 19 26.7 9 80.8 12 20.7 - 136.3
9・III 9 21.8 34 67.2 - - - -
9・IV 11 16.4 126 54.3 4 19.3 - 101.3
9・V 21 15.1 80 49.0 - - - -
9・VI 7 19.3 145 46.9 0 12.3 141 41.3

3.モンシロチョウ     発生量  少
成虫・幼虫ともに発生量は少なかった。

月・半旬 成虫数 10株当たり幼虫数
大野町 長沼町 大野町 長沼町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・II - 4.3 1 11.4 - 58.0 13 15.5
9・IV - 7.1 14 4.8 - 56.5 7 30.4
9・VI 0 5.7 9 1.8 9 36.5 4 35.8

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