平成13年度　病害虫発生予察情報　第15号

9月予報

平成13年8月28日　北海道病害虫防除所

（連絡先：予察課　Tel.01238(9)2080（内）323

　　　　　Fax.01238(9)2082）

季節予報（付記）によれば、9月の天気は平年同様、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わる、気温は高く、前半は残暑が厳しいと予報されています。
これまでの発生状況と季節予報から、多めの発生が予想される病害虫は、水稲の穂いもち、紅変米、大豆のマメシンクイガ、てんさいの褐斑病、りんごの斑点落葉病、キンモンホソガ、あぶらな科野菜の軟腐病、野菜類全般のアブラムシ類があげられます。

Ａ．水稲
Ｂ．麦類
Ｃ．ばれいしょ
Ｄ．豆類
Ｅ．てん菜
Ｆ．りんご
Ｇ．あぶらな科野菜
Ｈ．野菜類全般
季節予報

Ａ．水稲

いもち病（穂いもち）　　発生期：既発（やや早）　　発生量：並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 予察田における穂・節いもちの初発は、岩見沢市・比布町では平年より早かったが、大野町ではまだ「しまひかり」の枝梗いもちのみしか発生していない。発生量は、岩見沢市・比布町では平年より多発しており、特に節いもちの発生が多い。

      予察田における初発日
      地点 品種名 葉 枝梗 首 節 平年数
      本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
      大野町 きらら397 7月23日 7月7日 - 8月5日 - 8月18日 - 8月23日 1
      しまひかり 7月21日 7月14日 8月13日 8月10日 - 8月17日 - 8月25日 10
      岩見沢市 キタヒカリ 7月6日 7月12日 8月9日 8月16日 8月13日 8月18日 8月10日 8月20日 10
      きらら397 7月5日 7月28日 8月9日 8月23日 8月12日 8月26日 8月10日 8月27日 10
      比布町 きらら397 7月12日 7月18日 8月5日 8月10日 8月5日 8月16日 8月7日 8月18日 7
      ほしのゆめ 7月12日 7月15日 8月3日 8月6日 8月3日 8月12日 8月7日 8月13日 5

      予察田におけるいもち病の発生状況（8月4半旬）
      地点 品種名 葉（発病度） 病枝梗率 病首率 病穂率 節（病茎率）
      本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
      大野町 きらら397 10.0 27.0 0.0 52.8 0.0 14.9 0.0 52.8 0.0 0.0
      しまひかり 25.0 51.4 6.4 42.4 0.0 28.2 6.4 43.7 0.0 0.6
      岩見沢市 キタヒカリ 76.0 44.1 36.0 10.5 3.4 3.0 39.4 13.4 5.3 1.6
      きらら397 75.0 16.8 31.3 4.0 5.1 0.8 36.4 4.8 1.9 0.2
      比布町 きらら397 50.0 25.7 10.5 12.2 2.1 3.5 12.6 15.8 7.6 1.4
      ほしのゆめ 75.0 40.8 38.0 20.2 10.9 4.1 48.9 24.1 51.0 3.8

    2. 巡回調査によると、一般田での葉いもちの発生は全道各地で確認されており、特に　 渡島・檜山・留萌・胆振・日高で目立っている。
    3. 出穂期以降は穂いもちの防除が行われている。
    4. 9月の気温は高く、前半を中心に残暑が厳しいと予報されている。

  2. 防除対策
    1. 穂いもちの防除は傾穂期以降は不要である。
    2. 被害わらおよび罹病籾殻は次年度の発生源となるので、堆肥化するなど適正に処分する。

紅変米　　発生量：並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は割れ籾の多い品種で多発しやすく、成熟期の長雨、倒伏あるいは登熟遅延による玄米の高水分で発病する。
    2. 現在の水稲の主要品種は割れ籾が多い。
    3. 9月の気温は高く、降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 適期収穫後直ちに乾燥調製を行う。特に割れ籾の多い品種では、刈遅れにならないように注意する。

ヒメトビウンカ　　発生期：既発（早）　　発生量：並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 第2回成虫の予察灯による初発期は、大野町で7月17日（平年：7月23日）、岩見沢市で7月8日（平年：7月16日）、比布町で7月4日（平年：7月17日）と早かっ た。
    2. 8月の成虫発生量は、岩見沢市・比布町とも上旬まで発生量は平年より多く推移したが、中旬以降少なくなっている。また、巡回調査では空知支庁管内の一部で発生が 多いものの、全道的には少なくなっている。
    3. 9月は気温が高いと予報されているものの、現在の発生量からみて平年並の発生と考えられる。 　

セジロウンカ　　発生期：既発（早）　　発生量：やや少〜並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 予察灯による初誘殺は大野町で7月16日（平年：7月20日）、岩見沢市で7月14日（平年：7月24日）、比布町で7月13日（平年：7月24日）で、平年より早くなった。
    2. 7月中旬以降、各予察田とも平年よりすくい取り数が多くなっていたが、8月に入ってからは平年より少なくなっている。
    3. 9月は気温が高いと予報されているものの、現在の発生量からみてやや少から平年並の発生と考えられる。

  2. 防除対策
    1. 水田中央など風通しの悪い場所での発生に注意し、多発生を見たら防除する。

 アカヒゲホソミドリカスミカメ　　　発生期：既発（早）　　発生量：やや少

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 各定点とも、8月の水田での成虫発生量は平年より少なくなっている。また8月3半旬の巡回調査では水田内すくい取りで、最も多い地区で1頭、ほとんどが0頭となっている。
    2. 各定点とも、8月の水田での幼虫発生量は平年より少ない。
    3. 9月は気温が高いと予報されているものの、現在の発生量からみて少なめのまま推移すると考えられる。

      アカヒゲホソミドリカスミカメの水田内すくい取り数
      地点
      月半旬      		 岩見沢市 比布町 大野町
      成虫数 幼虫数 成虫数 幼虫数 成虫数 幼虫数
      本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
      8.I 10.0 21.9 5.0 5.4 2.5 6.2 0.0 0.5 0.0 1.8 0.0 0.0
      8.II 8.3 35.7 1.7 37.3 0.0 3.7 1.7 2.9 0.0 3.9 0.0 2.5

  2. 防除対策
    1. 第3回以降の防除は7〜10日間隔ですくい取り調査（20回振り）を実施し、2頭 （「ほしのゆめ」では1頭）を基準として防除を行う。 


Ｂ．麦類

秋期発生病害（うどんこ病・赤さび病） 　　　発生期：やや早　　発生量：並

  1. 予報の根拠
    1. 9月は気温が高く、降水量は平年並と予報されているため、両病害とも発生期はやや早く発生量は平年並と考えられる。 　

  2. 防除対策
    1. 秋期の防除は必要ない。 　


Ｃ．ばれいしょ

塊茎腐敗 　　　発生量：やや少

  1. 予報の根拠
    1. 茎葉の疫病はやや多かったが、9月は気温が高く、降水量は平年並と予報されているため、塊茎腐敗はやや少発生と考えられる。

  2. 防除対策
    1. 晴天時に掘り取り、よく乾燥させてから貯蔵する。


Ｄ．豆類

マメシンクイガ（大豆） 発生期：やや遅 　発生量：並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 芽室町の予察ほでの産卵初発は8月4半旬（平年：8月3半旬）とやや遅かった。
    2. 芽室町の予察ほでの産卵量は8月中旬以降の好天経過から平年より多くなっているが、産卵期はすでに終わっていると見込まれることから、発生量は平年並からやや多と考えられる。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して茎葉散布を行う。


Ｅ．てんさい

褐斑病　　発生期：既発（やや早）　　発生量：並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 予察ほでの発生量は、長沼町・芽室町では平年より少なく、訓子府町では平年並である。

      予察ほにおける褐斑病の発生状況（8月4半旬）
      地点 品種名 発病株率 発病度 平年数
      本年 平年 本年 平年
      長沼町 めぐみ 92.0 100.0 23.6 47.2 1
      アーベント 94.0 100.0 21.6 31.2 1
      モノエースＳ - 65.8 - 14.9 8
      訓子府町 モノエースＳ 100.0 67.6 22.4 22.7 9
      芽室町 モノエースＳ 86.7 79.3 14.1 21.3 10
    2. 巡回調査によると、一般ほでは、全道で発生は見られるものの、発病株率は低い。
    3. 9月の前半は残暑が厳しいと予報されている。

  2. 防除対策
    1. 発生ほ場では引き続き薬剤散布を行う。9月下旬以降の防除は不要である。 　
    2. 薬剤の残効を考慮し、散布間隔を調節し効率的な防除を行う。 　

ヨトウガ（第2回）　　発生期：既発（並）　　発生量：並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 第1回幼虫による被害量は、長沼町・訓子府町で平年並、芽室町で少なめとなったことから、第2回成虫の発生量は平年並と考えられる。

  2. 防除対策
    1. 茎葉散布は被害株率が50％に達した時点から開始する。 　
    2. 初回防除の2週間後以降も被害が進展するときは追加防除を検討する。


Ｆ．りんご

黒星病　　発生期：既発（並）　　発生量：並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 長沼町の予察園での発生量は、「ふじ」で平年並、「スターキングデリシャス」で平年より多く推移している。
    2. 巡回調査によると、一般園では渡島・胆振支庁管内の一部で発生が見られるが、発病葉率は低い。
    3. 本病は多湿条件で多発する。
    4. 9月の平均気温は高く、降水量は平年並と予報されていることから、このまま平年並の少発生に推移すると予想される。

  2. 防除対策
    1. 現在、新梢葉・徒長枝葉に発病がみられる園では、果実の発病が増加する恐れがあるので、防除基準に準拠し、十分量の薬液を丁寧に散布する。　

斑点落葉病　　発生期：既発（早）　　発生量：並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 長沼町の予察園での現在の発生量は、ほぼ平年並に推移している。
    2. 巡回調査によると、一般園では全道的に発生しており、特にデリシャス系では発病が目立っている。
    3. 本病は高温多湿で多発し、特に2〜3日の連続した降雨で急増する。
    4. 9月の平均気温は高く、降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 発生の目立つ園では防除基準に準拠して薬剤散布を継続し、来年度の多発を防ぐため病原菌密度を高めないようにする。

ハダニ類 　発生期：既発（並）　　発生量：並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. リンゴハダニの発生量は長沼町・余市町・仁木町で平年並であり、ナミハダニでは 長沼町で多めで、余市町・仁木町では少なくなっている。
    2. 9月は気温が平年より高いと予報されているが、急激に増殖するとは考えられない。

  2. 防除対策
    1. 発生状況に注意し、薬剤散布を継続する。
    2. 同一系統の薬剤を使用すると薬剤抵抗性の発達が急速に進むので、異なる系統の薬剤をローテーション散布する。
    3. 一部の地域のナミハダニで、ピラゾール系剤（フェンピロキシメート水和剤、テブフェンピラド乳剤）、BPPS水和剤およびヘキシチアゾクス水和剤で感受性の低下が見られているため、該当する地域では散布しない。その他の地域でも同系統の剤を同一年度に散布することは避け、年度を変えてのローテーション散布を行う。
　

キンモンホソガ（第4回）　 発生期：既発（並） 　発生量：並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 長沼町の予察園のフェロモントラップによる第3回成虫の誘殺数はやや多いものの、幼虫による被害は平年並となっている。
    2. 余市町ではフェロモントラップによる誘殺数が多くなっている。
    3. 9月は気温が高いと予報されており、第3回成虫の発生量からみて、第4回成虫の発生量は平年並からやや多と見込まれる。

      予察園における誘殺数・被害葉率
      月半旬 長沼町
      誘殺数 被害葉率
      本年 平年 本年 平年
      8.I 396 162.3 　 　
      8.II 346 245.6 13.0 11.2
      8.III 170 146.6 　 　
      8.IV 92 169.7 17.0 16.7

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。


Ｇ．あぶらな科野菜

軟腐病　　発生量：並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は高温多雨で多発する。
    2. 9月の平均気温は高く、降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。害虫の食害痕などの傷口からも侵入するので害虫の防除もあわせて行う。

モンシロチョウ　　発生期：既発（やや早） 　発生量：やや少〜並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 第3世代成虫の発生量は、長沼町・大野町では平年より少ない。
    2. 9月は気温が高いと予報されているものの、現在の成虫数から見て、幼虫による被害はやや少から平年並と予想される。

  2. 防除対策
    1. 成虫の飛来が目立ち産卵が多いほ場では、防除基準に準拠して薬剤散布を行う。
    2. 薬剤防除にあたっては、他害虫の発生に注意し、同時防除できる薬剤を選択する。

コナガ　　発生量：並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 8月に入ってからのフェロモントラップによる捕殺数は訓子府町で平年並である他は各定点とも平年より少なくなっている。
    2. 大野町・長沼町の予察ほでは7月中旬まで幼虫数は平年を超えていたが、7月下旬の降雨などの影響で急減し、やや少から平年並となっている。
    3. 9月は気温が高いと予報されているものの、現況の幼虫数からみて、発生量は平年並と考えられる。

  2. 防除対策
    1. 薬剤抵抗性が発達した害虫なので、ローテーション散布を実施する。なお、合成ピレスロイド系薬剤では抵抗性個体群が出現しているので他系統の薬剤を使用する。
    2. 防除にあたっては他害虫の発生に注意し、効率的な防除体系を組み立てる。


Ｈ．野菜類全般

灰色かび病　　発生量：並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は低温多湿条件で多発する。施設栽培では管理条件によって発生が大きく左右される。 　
    2. 9月は気温は高く降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 換気、灌水などハウス管理を適切に行い、発病に適した環境を作らない。特に夜温が下がっているため、ハウスの開閉に注意し、湿度を上げないように注意する。
    2. 罹病葉のつみとり、下葉の除去を徹底し、発生源をハウスに残さない。
    3. 耕種的防除を基本とし、薬剤散布は補助手段と考える。治療効果のある薬剤でも、 多発してからの効果はない。 　
    4. ジカルボキシイミド系剤の耐性菌が広く認められている。また、ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤の耐性菌も一部地域で確認されているため、薬剤の選択には注意する。

ハダニ類　　発生量：並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 8月は気温が高めであったものの、発生量は平年並となっている。
    2. 9月は気温が平年より高いと予報されていることが、急激に増殖するとは考えられない。

  2. 防除対策
    1. 薬剤抵抗性の発達を避けるため、同一薬剤の連用・過用をさける。　

アブラムシ類 　発生量：並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 9月は気温が高いと予報されていることから、発生量は平年並からやや多になると考えられる。

  2. 防除対策
    1. 発生状況に注意し、発生初期に薬剤散布を行う。

付記

北海道地方　3か月予報

（9月から11月までの天候見通し）

平成13年8月20日
札幌管区気象台発表

3か月（9〜11月）の気温の各階級の確率（％）

[気温]

北海道地方
20 40 40
　
低い
平年並
高い

3か月平均気温は、平年並か高い可能性が大きく、その確率は共に40％です。

可能性の大きな天候見通し

9月
平年同様、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気は数日の周期で変わるでしょう。気温は高く、前半は残暑が厳しいでしょう。
10月
天気は数日の周期で変わりますが、気圧の谷の影響で天気のぐずつく時期があるでしょう。後半には一時的に強い寒気の入る日がある見込みです。
11月
天気は概ね周期的に変化しますが、低気圧の通過後に一時冬型の気圧配置となる日があるでしょう。気温は平年並ですが、寒暖の変動が大きい見込みです。

3か月間降水量は平年並でしょう。

要素 予報対象地域 9月 10月 11月
気温 北海道全域 高い 平年並 平年並
降水量 北海道全域 平年並 平年並 平年並

病害虫発生予察情報一覧へ戻る
ホームページへ戻る