平成12年度 病害虫発生予察情報 第24号

9月月報

平成12年9月20日 北海道病害虫防除所

(連絡先:予察課 Tel.01238(9)2080(内)323

     Fax.01238(9)2082)

 

気象概況
A.水稲
B.豆類
C.てん菜
D.りんご
E.あぶらな科野菜

I.気象概況

──『高温・多雨・寡照』気圧の谷や前線の影響で記録的な寡照──

この期間は、気圧の谷や前線の影響で曇りや雨の日が多かった。このため、日照時間は極端に少なく、全道平均は1946年の統計開始以来第2位の少ない値となった。また、降水量は一部を除きかなり多く、特に1〜2日にかけての大雨で、各地に被害をもたらした。気温は中旬以降は高い日が多く、月平均ではかなり高くなった。

上旬:1〜3日は活発な前線や台風第12号から変わった低気圧の影響で、1日は南西部で、2日は日本海側北部やオホーツク海側を中心に記録的な大雨となった。このため各地で家屋の浸水や交通障害等の被害が発生した。日降水量は1日八雲93ミリ、2日旭川市江丹別157ミリ、紋別129ミリ(統計開始以来9月の2位)等。総降水量は網走・上川・空知管内の多い所で160〜210ミリ。4〜5日は高気圧に覆われて晴れた。6日は気圧の谷の影響で全道的に雨や雷雨となった。降水量は太平洋側の多い所で30〜40ミリ。7日は寒冷前線が通過して北部や日本海側を中心に曇りや雨となった。8日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、日本海側で曇りの所があった。9〜10日は気圧の谷の影響で概ね曇り、南西部や太平洋側の一部で雨降った。総降水量は多い所で30〜40ミリ。

中旬:11日〜12日は気圧の谷や前線の影響で、内陸部や太平洋側を中心に雨が降り、胆振管内では局地的に大雨となった。1時間最大降水量は12日室蘭で40.5ミリ。日降水量は12日室蘭70.5ミリ、八雲34ミリ等。13日は気圧の谷の影響で、北部やオホーツク海側を除くほとんどの地域で雨が降った。14日〜16日は前線の影響で、14日は全道的に、15日はオホーツク海側を、16日は太平洋側を中心に雨が降った。総降水量は日本海側からオホーツク海側の多い所で50〜70ミリ。17日〜18日は日本海から北東進してきた低気圧と台風第17号を結ぶ気圧の谷の影響で、全道的に雨が降ったが、南西部では18日昼前から晴れた。なお、18日には台風第17号が釧路沖に接近し、太平洋側東部ではうねりが非常に高くなった。日降水量は17日熊石62ミリ等。18日名寄38ミリ、和寒30ミリ等。19日〜20日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、北部は短い周期で気圧の谷が通過し、弱い雨の降った所があった。

下旬:21日〜23日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、気圧の谷が通過し弱い雨の降った所があった。24日〜25日は低気圧の影響で、全道的に雨が降り、南西部や太平洋側を中心に大雨となった。総降水量はえりも町目黒142ミリ、函館市蛾眉野139ミリ、中標津96ミリ等。26日〜28日は上空の寒気を伴う気圧の谷の影響で、日本海側やオホーツク海側を中心に雨が降り、局地的に大雨となった。日降水量は26日手稲山59ミリ。27日赤井川67ミリ、手稲山64ミリ、札幌46ミリ。28日北見市仁頃山62ミリ、赤井川37ミリ等。29日〜30日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、29日は北部で気圧の谷の通過により弱い雨が降った。

気候表
  気温偏差 階級 降水比 階級 日照比 階級
北海道22地点平均 +1.4℃ かなり高 161% かなり多 72% かなり少
太平洋側8地点平均 +1.3℃ かなり高 138% やや多 77% やや少
オホーツク海側4地点平均 +1.4℃ かなり高 208% かなり多 75% かなり少
日本海側10地点平均 +1.4℃ かなり高 162% かなり多 67% かなり少


II.病害虫発生概況

A.水稲

1.いもち病(穂)     発生量  やや多
予察田における発生量は、大野町でやや多、岩見沢市では多、比布町で少であった。一般田では平年よりやや多い発生であった。
地点 品種名 枝梗いもち 穂首いもち 穂いもち 節いもち 平年数
病穂率(%) 病穂率(%) 病穂率(%) 病茎率(%)
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 100.0 -  73.5 - 100.0 - 29.4 - 0
しまひかり 100.0 93.0 100.0 50.6 100.0 92.0 14.4 15.9 10
岩見沢市 キタヒカリ 27.8 23.9 72.2 41.6 100.0  65.5 15.2 26.8 10
きらら397  70.9 14.2 28.4 6.5 99.3  20.7 21.5 5.1 10
比布町 きらら397  12.3 40.7 1.1 12.2 13.4  49.0 0.2 8.4 6
ほしのゆめ 10.2 38.6 1.1 32.7 11.3  71.3 3.1 38.0 4

2.紋枯病   発生量  並
予察田における発生量は大野町ではやや少、岩見沢市では多であった。

3.セジロウンカ   発生量   並〜やや多
大野町および岩見沢市の予察田では成虫の誘殺数は少なかった。水田内の成虫数は大野町でやや少なかったが、岩見沢市では多くなった。
月・半旬 成虫誘殺数 すくい取り成虫数
岩見沢市 大野町 岩見沢市 大野町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I  9 12.7 1 1.9 190.0 182.3 190.0 49.1
9・II  7 16.1 2 1.6 310.0 119.5 235.0 55.0
9・III  1 12.0 3 3.1 170.0 315.5 100.0 30.4
9・IV  1 6.6 6 9.9 45.0 759.5 50.0 31.6
9・V  0 5.0 1 9.7 55.0 68.8 - 12.9
9・VI - 3.2 0 33.0 0.0 1.7 - 2.9

4.アカヒゲホソミドリカスミカメ  発生量  やや多
大野町では成幼虫とも確認できなかったが、岩見沢市では高温経過により成幼虫の発生量がやや多くなった。
月・半旬 すくい取り成虫数 すくい取り幼虫数
岩見沢市 大野町 岩見沢市 大野町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I  0 7.0 13.3 2.6 0 15.0 26.7 16.8
9・II  0 2.8 15.0 3.3 0 15.0 20.0 8.4
9・III  0 2.8 5.0 1.0 0 7.5 10.0 2.5
9・IV  0 1.0 5.0 2.5 0 0.0 5.0 3.9
9・V  0 2.5 - 0.8 0 2.5 - -
9・VI  0 1.5 - 1.4 0 - - -

5.ニカメイガ          発生量   やや少〜並
大野町の予察田では被害茎率0.3%(平年:1.1%)、在虫茎率0.2%(平年:0.6%)と平年より被害は少なかったが、岩見沢市では被害茎率7.9%(平年:7.4%)、在虫茎率2.8%(平年:2.4%)と平年並の発生であった。

B.豆類

1.大豆のべと病     発生量  少
9月4半旬の長沼町の予察ほでは「キタホマレ」で発病株率72.0%(平年:78.0%)、発病度18.0(平年:26.0)、「トヨムスメ」で発病株率50.0%(平年:82.0%)、発病度12.5(平年:36.3)と少発生であった。

2.大豆のわい化病    発生量  やや少
予察ほにおける発生量は、長沼町で少、訓子府町でやや少であった。

3.小豆のアズキノメイガ     発生量  並〜やや多
長沼町の予察ほでは、被害株率8.0%(平年:8.2%)、被害莢率0.5%(平年:0.9%)とほぼ平年並であったが、芽室町および訓子府町では被害株率が13.3%(平年:9.1%)、38.0%(平年:14.0%)、被害莢率が0.5%(平年:0.6%)、1.8%(平年:0.8%)とやや多発になった。

C.てんさい

1.褐斑病          発生量  多
予察ほにおける発生量は長沼町、訓子府町および芽室町とも平年より多い発生であった。
地点 品種名 発病度 平年数
9.II 9.IV 9.VI
本年 平年 本年 平年 本年 平年
長沼町 モノエースS - 41.7 - 50.6 - 63.8 8
めぐみ 90.4 - 100.0 - 99.2 - 0
アーベント 78.8 - 93.2 - 97.6 - 0
訓子府町 モノエースS 100.0 39.1 100.0 50.9 100.0 61.8 8
芽室町 モノエースS 85.6 44.8 94.9 58.4 100.0 66.1 9
ストーク 88.5 68.2 96.5 83.0 100.0 87.2 2

2.ヨトウガ           発生量   多
各予察ほとも食害程度は90を越えるなど、多発生となった。普及センターからの報告でも、一般ほで被害が目立った。
月・半旬 食害程度
長沼町 芽室町 訓子府町
本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I 42 49 59 37 43 32
9・II 63 48 72 32 61 30
9・III 76 48 82 29 67 30
9・IV 93 46 88 31 94 30
9・V 81 49 90 29 - 36
9・VI 74 46 90 29 - 32

D.りんご

1.黒星病             発生量  並
長沼町の予察園における発生量は「スターキング・デリシャス」で平年よりやや多く、「ふじ」では平年並であった。普及センターからの報告によると、一般園では平年並の少発生であった。
地点 品種名   病葉率(%) 平年数
9.II 9.IV 9.VI
長沼町 スターキング
デリシャス
本年 92.8 96.9 98.9 10
平年 69.3 71.2 88.3
ふじ 本年 91.9 95.3 90.3 3
平年 97.7 91.5 95.7

2.斑点落葉病          発生量  やや多
長沼町の予察園における発生量は平年並であった。普及センターからの報告によると、一般園ではやや多い発生であった。
地点 品種名 調査枝   病葉率(%) 平年数
9.II 9.IV 9.VI
長沼町 スターキング
デリシャス
新梢 本年 72.6 78.3 86.6 6
平年 75.5 80.1 85.1
徒長枝 本年 77.3 83.4 85.1 4
平年 76.4 77.2 80.5

3.モモシンクイガ        発生量  並
長長沼町の予察園ではフェロモントラップによる誘殺数はほぼ平年並で、被害果率は8月末より100%と平年よりやや多くなった。余市町・仁木町の一般園では誘殺数は平年より少なかった。

4.キンモンホソガ         発生量  並
長沼町の予察園ではフェロモントラップによる誘殺数は少なく、被害葉率は平年並であった。仁木町・余市町の一般園では誘殺数は平年並であったが、増毛町では多めとなった。

5.ハダニ類           発生量   やや少〜並
長沼町の予察園ではリンゴハダニは平年並でナミハダニは少なかったが、余市町・仁木町の一般園では両種とも少なかった。

E.あぶらな科野菜

1.軟腐病     発生量   少
長沼町の予察ほでは、だいこん・はくさいとも平年より少ない発生であった。

2.コナガ            発生量   少〜やや少
予察ほでのフェロモントラップによる誘殺数は、長沼町では平年並、大野町では少なかった。幼虫の寄生数は両地点とも平年より少なかった。
月・半旬 フェロモンによる誘殺数 10株当たり寄生虫数
長沼町 大野町 長沼町 大野町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
9・I 68 35 8 85 - - - -
9・II 30 29 20 79 7 21 25 222
9・III 18 25 8 67 - - - -
9・IV 11 20 11 54 5 21 20 134
9・V 23 15 4 49 - - - -
9・VI 10 21 22 46 2 14 28 51

3.モンシロチョウ     発生量  やや多
長沼町の予察ほでは第3世代成虫の発生量が中旬頃にやや多く、幼虫の寄生数は月後半で多くなった。
月・半旬 成虫数 10株当たり幼虫数
長沼町 長沼町
本年 平年 本年 平年
9・I 3 8.9 1 11.8
9・II 13 10.7 3 16.0
9・III - 6.0 4 21.5
9・IV 12 4.5 37 28.2
9・V 3 2.2 46 29.8
9・VI 3 1.6 47 30.6

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