平成12年度 病害虫発生予察情報 第22号

9月予報

平成12年8月23日 北海道病害虫防除所

(連絡先:予察課 Tel.01238(9)2080(内)323

     Fax.01238(9)2082)


季節予報(付記)によれば、9月の天気は周期的に変化するが、気圧の谷や前線の影響で天気のぐずつく時期がある、気温は高くなると予報されています。
これまでの発生状況と季節予報から、多めの発生が予想される病害虫は、水稲の穂いもち、ヒメトビウンカ、セジロウンカ、アカヒゲホソミドリカスミカメ、てんさいの褐斑病、ヨトウガ、りんごの斑点落葉病、ハダニ類、キンモンホソガ、あぶらな科野菜のモンシロチョウ、野菜類全般のハダニ類、アブラムシ類があげられます。

A.水稲
B.豆類
C.てん菜
D.りんご
E.あぶらな科野菜
F.野菜類全般
季節予報

A.水稲

いもち病(穂いもち)  発生期:既発(早)  発生量:並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 予察田における穂・節いもちの初発は、大野町・岩見沢市・比布町とも平年より早かった。発生量は、大野町・岩見沢市では平年より多く、比布町では平年より少なく推移している。
    2. 普及センターからの報告によると、一般田での葉いもちの発生は全道各地で確認されている。7月上旬にすでにずりこみがみられる地域も一部あったが、出穂期以降の穂いもちの防除は適期に行われた。
    3. 9月の平均気温は高く、降水量・日照時間は平年並と予報されている。
      予察田における初発月日
      地点 品種名 枝梗いもち 穂首いもち 節いもち 平年数
      本年 平年 本年 平年 本年 平年
      大野町 きらら397 8月5日 - 8月18日 - 未発生 - 0
      しまひかり 8月4日 8月14日 8月12日 8月19日 8月20日 8月25日 10
      岩見沢市 きらら397 8月4日 8月26日 8月4日 8月28日 8月18日 8月29日 10
      キタヒカリ 8月4日 8月16日 8月4日 8月18日 8月13日 8月20日 10
      比布町 きらら397 8月1日 8月11日 8月3日 8月18日 8月15日 8月18日 6
      ほしのゆめ 8月1日 8月8日 8月4日 8月14日 8月14日 8月13日 4

      予察田における8月4半旬の発生状況
      地点 品種名 穂いもち 節いもち 平年数
      病穂率(%) 病枝梗率(%) 病首率(%) 病茎率(%)
      本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
      大野町 きらら397 52.8 - 52.8 - 14.9 - 0 - 0
      しまひかり 97.8 34.3 97.8 14.7 83.4 0.6 0.4 0.6 10
      岩見沢市 きらら397 8.4 3.9 7.5 3.2 0.9 0.7 0.2 0.2 10
      キタヒカリ 42.1 9.8 29.1 8.0 13.0 1.8 3.1 1.9 10
      比布町 きらら397 4.4 17.7 3.9 13.6 0.5 4.1 0.0 1.6 6
      ほしのゆめ 3.1 29.4 2.8 24.6 0.3 5.0 0.0 11.6 4
      注)大野町の「しまひかり」の病枝梗率・病穂率のみ平年数2年。
  2. 防除対策
    1. 穂いもちの防除は傾穂期以降は不要である。
    2. 被害わらおよび罹病籾殻は次年度の発生源となるので、堆肥化するなど適正に処分する。

紅変米  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は割れ籾の多い品種で多発しやすく、成熟期の長雨、倒伏あるいは登熟遅延による玄米の高水分で発病する。
    2. 水稲の生育は良好で、登熟も順調に進んでいる。
    3. 9月の平均気温は高く、降水量・日照時間は平年並と予報されている。
  2. 防除対策
    1. 適期収穫後直ちに乾燥調製を行う。特に割れ籾の多い品種では、刈遅れにならないように注意する。

ヒメトビウンカ  発生期:既発(早)  発生量:やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 第2回成虫の黄色水盤による初発は、岩見沢市で7月1半旬(平年:7月3半旬) 比布町で7月11日(平年:7月17日)と早かった。
    2. 7月の成虫発生量は、岩見沢市・比布町とも平年より多く推移し、8月に入っても岩見沢市では多めに経過している。 
    3. 9月は気温が高いと予報されていることから、発生量はやや多のまま推移すると考えられる。 

セジロウンカ  発生期:既発(早)  発生量:やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. すくい取りによる初発は岩見沢市で7月17日(平年:7月24日)、大野町で7月5日(平年:7月15日)、比布町で7月24日(平年:7月30日)で、平年より早い発生となった。  
    2. 7月中旬以降、各予察田とも平年より多い誘殺が認められたが、8月2半旬以降、岩見沢市で多めであるが、比布町では平年より少なくなっている。
    3. 水田内でのすくい取りでは、各定点とも8月に入ってからも多めとなっている。
    4. 9月は気温が高いと予報されており、発生量は多めのまま推移すると予想される。
  2. 防除対策
    1. 水田中央など風通しの悪い場所での発生に注意し、多発生を見たら防除する。

アカヒゲホソミドリカスミカメ  発生期:既発(やや早)  発生量:やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 水田での成虫の発生量は、大野町で多めのほかは平年並となっている。  
    2. 8月に入ってからは岩見沢市・比布町での水田内の幼虫数が平年より多めとなっている。
    3. 9月は気温が高いと予報されていることから、第3回成虫の増加が見込まれる。
      アカヒゲホソミドリカスミカメの水田内すくい取り数
      地点
      月半旬
      岩見沢市 比布町 大野町
      成虫数 幼虫数 成虫数 幼虫数 成虫数 幼虫数
      本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
      8.I 25.0 19.9 16.7 4.1 0.0 7.2 0.0 5.8 7.5 1.0 0.0 0.0
      8.II 15.0 34.2 91.7 28.2 0.0 3.9 11.7 2.9 11.6 2.8 0.0 5.0
  2. 防除対策
    1. 第3回以降の防除は7〜10日間隔ですくい取り調査(20回振り)を実施し、2頭を判断基準として実施する。


B.豆類

マメシンクイガ(大豆) 発生期:やや早  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 高温経過から、産卵初発は平年よりやや早いと考えられる。
    2. 近年発生量は少ないことから、越冬密度は低く、平年並の少発生と考えられる。
  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して茎葉散布を行う。


C.てんさい

褐斑病  発生期:既発(やや早)  発生量:やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 予察ほでの初発は以下のとおりである。長沼町・訓子府町・芽室町とも、8月に入ってから急増し、8月4半旬の発生量は平年より多かった。
    2. 普及センターからの報告によると、一般ほでは、石狩・上川・網走・胆振・十勝・ 釧路支庁管内の一部で発生している。
    3. 9月は平均気温は高く、降水量・日照時間は平年並と予報されている。
      予察ほにおける初発月日・8月4半旬の発生状況
      地点 品種名 初発月日 8.IV 平年数
      発病株率(%) 発病度
      本年 平年 本年 平年 本年 平年
      長沼町 めぐみ 7月15日 - 100 - 47.1 - 0
      アーベント 7月15日 - 100 - 31.2 - 0
      モノエースS - 7月22日 - 65.8 - 14.9 8
      訓子府町 モノエースS 7月18日 7月26日 100 63.5 60.0 18.0 8
      芽室町 モノエースS 7月18日 7月21日 100 77.0 36.8 19.5 9
      ストーク 7月18日 7月22日 100 100.0 40.8 35.8 2
  2. 防除対策
    1. 発生ほ場では引き続き薬剤散布を行う。9月下旬以降の防除は不要である。  
    2. 薬剤の残効を考慮し、散布間隔を調節し効率的な防除を行う。  

ヨトウガ(第2回)  発生期:既発(やや早)  発生量:やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 第1回幼虫による被害量は平年より多めであったことから、第2回成虫の発生量はやや多いと考えられる。
    2. 9月は気温が高いと予報されていることから、幼虫による被害は多めになると予想 される。
  2. 防除対策
    1. 茎葉散布は被害株率が50%に達した時点から開始する。  
    2. 初回防除の2週間後以降も被害が進展するときは追加防除を検討する。


D.りんご

黒星病  発生期:既発(早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 長沼町の予察園での発生量は、「ふじ」で平年並、「スターキングデリシャス」で平年より多く推移している。普及センターからの報告によると、一般園では全道的に 平年並の少発生に推移している。   
    2. 本病は冷涼多雨で多発する。  
    3. 9月の平均気温は高く、降水量・日照時間は平年並と予報されていることから、平年並の少発生に推移すると予想される。
      予察園における8月4半旬の発生状況
      品種名(樹齢) 病葉率(%) 発病度 平年数
      本年 平年 本年 平年
      ふじ(20) 87.2 87.0 39.3 35.4 3
      スターキングデリシャス(23) 94.4 70.6 52.0 37.8 10
  2. 防除対策
    1. 現在、新梢葉・徒長枝葉に発病がみられる園では、果実の発病が増加する恐れがあるので、防除基準に準拠し、十分量の薬液を丁寧に散布する。 

斑点落葉病  発生期:既発(早)  発生量:並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 長沼町の予察園での現在の発生量は、平年より少なく推移している。普及センターからの報告によると、一般園では全道的に平年並に推移している。
    2. 本病は高温多湿で多発し、特に2〜3日の連続した降雨で急増する。
    3. 9月の平均気温は高く、降水量・日照時間は平年並と予報されている。
      予察園における8月4半旬の発生状況
      品種名(樹齢)   病葉率(%) 病斑数(個)/1葉 平年数
      本年 平年 本年 平年
      スターキングデリシャス(23) 新梢 40.1 59.9 0.8 3.2 6
      徒長枝 57.0 54.9 1.1 4.0 4
      注)徒長枝の1葉あたり病斑数のみ平年数3年。
  2. 防除対策
    1. 発生の目立つ園では防除基準に準拠して薬剤散布を継続し、来年度の多発を防ぐため病原菌密度を高めないようにする。

ハダニ類   発生期:既発(やや遅)  発生量:やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 現在の発生量は長沼町の予察園では少ないものの、余市町・仁木町の一般園での発生量はほぼ平年並となっている。
    2. 9月は気温が高いと予報されていることから、発生量はやや多くなると考えられる。
  2. 防除対策
    1. 発生状況に注意し、薬剤散布を継続する。
    2. 同一系統の薬剤を使用すると薬剤抵抗性の発達が急速に進むので、異なる系統の薬剤をローテーション散布する。
 

キンモンホソガ(第4回)  発生期:既発(やや早)  発生量:並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 長沼町の予察園のフェロモントラップによる第3回成虫の誘殺数は多めとなってお り、幼虫による被害も平年より多めとなっている。
    2. 余市町・増毛町の一般園では平年並から多めの発生となっている。
    3. 9月は気温が高いと予報されおり、第3回成虫の発生量からみて、第4回成虫の発 生量は平年並からやや多と考えられる。
      予察園における誘殺数・被害葉率
      月半旬 長沼町
      誘殺数 被害葉率
      本年 平年 本年 平年
      8.I 61 170.4    
      8.II 367 218.4 15.0 10.8
      8.III 345 114.3    
      8.IV 233 146.7 20.0 17.8
  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。


E.あぶらな科野菜

軟腐病  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は高温多雨で多発する。
    2. 9月の平均気温は高く、降水量・日照時間は平年並と予報されている。  
  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。害虫の食害痕などの傷口からも侵入するので害虫の防除もあわせて行う。

モンシロチョウ  発生期:既発(やや遅)  発生量:並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 第3世代成虫の発生量は、長沼町では多めとなっている。
    2. 9月は気温が高いと予報されていることから、幼虫による被害は平年並から多めになると予想される。
  2. 防除対策
    1. 成虫の飛来が目立ち産卵が多いほ場では、防除基準に準拠して薬剤散布を行う。
    2. 薬剤防除にあたっては、他害虫の発生に注意し、同時防除できる薬剤を選択する。

コナガ  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 7月中旬までは、フェロモントラップによる捕殺数は長沼町で多めであったが、8月に入ってからは、他の予察定点同様誘殺数は平年より少なくなっている。
    2. 大野町・長沼町の予察ほでは7月中旬まで幼虫数は平年を超えていたが、高温・降雨などの影響で急減し、やや少から平年並となっている。
    3. 9月は気温が高いと予報されているものの、現況の幼虫数からみて、発生量は平年並と考えられる。
  2. 防除対策
    1. 薬剤抵抗性が発達した害虫なので、ローテーション散布を実施する。なお、合成ピレスロイド系薬剤では抵抗性個体群が出現しているので他系統の薬剤を使用する。
    2. 防除にあたっては他害虫の発生に注意し、効率的な防除体系を組み立てる。


F.野菜類全般

灰色かび病  発生期:既発  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は低温多湿条件で多発する。施設栽培では管理条件によって発生が大きく左右される。  
    2. 9月は気温は高く降水量は平年並と予報されている。
  2. 防除対策
    1. 換気、灌水などハウス管理を適切に行い、発病に適した環境を作らない。特に夜温が下がっているため、ハウスの開閉に注意し、湿度を上げないように注意する。
    2. 罹病葉のつみとり、下葉の除去を徹底し、発生源をハウスに残さない。
    3. 耕種的防除を基本とし、薬剤散布は補助手段と考える。治療効果のある薬剤でも、 多発してからの効果はない。  
    4. ジカルボキシイミド系剤の耐性菌が広く認められている。また、ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤の耐性菌も一部地域で確認されているため、薬剤の選択には注意する。

ハダニ類  発生期:既発  発生量:並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 8月は気温が高めであったものの、発生量は平年並となっている。
    2. 9月は気温が高いと予報されていることから、発生量は平年並からやや多と見込まれる。
  2. 防除対策
    1. 薬剤抵抗性の発達を避けるため、同一薬剤の連用・過用をさける。 

アブラムシ類  発生期:既発  発生量:並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 9月は気温が高いと予報されていることから、発生量は平年並からやや多になると考えられる。
  2. 防除対策
    1. 発生状況に注意し、発生初期に薬剤散布を行う。


付記

北海道地方 3か月予報

(9月から11月までの天候見通し)

平成12年8月21日
札幌管区気象台発表

3か月(9〜11月)の気温の各階級の確率(%)

[気温]

北海道地方
20 40 40
気候的出現率
30 40 30
 
低い
平年並
高い

3か月平均気温は、平年並か高い可能性が大きく、その確率は共に40%です。

可能性の大きな天候見通し

9月
天気は周期的に変化しますが、気圧の谷や前線の影響で天気のぐずつく時期がある見込みです。気温は高くなるでしょう。
10月
天気は周期的に変化するでしょう。気温は高くなりますが、低気圧の通過後、一時的に寒気が入るでしょう。
11月
天気は周期的に変化しますが、低気圧の通過後、冬型の気圧配置となる日があるでしょう。平年と同様、日本海側では曇りや雪の日が多い見込みです。

3か月間降水量は平年並でしょう。

要素 予報対象地域 9月 10月 11月 3か月
気温 北海道全域 高い 高い 平年並  
降水量 北海道全域 平年並 平年並 平年並 平年並


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