平成12年度 病害虫発生予察情報 第10号

5月月報

平成12年6月9日 北海道病害虫防除所

(連絡先:予察課 Tel.01238(9)2080(内)323

     Fax.01238(9)2082)

 



気象概況
A.水稲
B.秋まき小麦
C.てん菜
D.りんご
E.あぶらな科野菜
F.飛来性昆虫 6月13日追加

I.気象概況

──『高温・並雨・寡照』全道的に日照不足、下旬高温──

 上・中旬は東海上の高気圧や動きの遅い低気圧の影響を受けて、太平洋側を中心に曇りや雨の日が多く、オホーツク海側では低温で経過した。特に12〜15日は太平洋側西部を中心に記録的大雨となった(岩見沢・苫小牧で月降水量の極値を更新)。下旬は発達した低気圧が通過し荒れた天気となったが、気温は全道的にかなり高く経過した。このため上・中旬も高めに経過した札幌・江差では月平均気温の高い極値を更新した。

上旬:1日は高気圧に覆われて晴れた所が多かったが、オホーツク海側では霧で、夕方からは気圧の谷の影響で南西部から雨が降り出した。2日は東海上から高気圧が張り出し、北部やオホーツク海側では晴れたが、その他は曇りで南西部や太平洋側では霧や霧雨となった。3〜4日は寒気を伴った低気圧が北海道の南を通過し南西部や太平洋側で雨が降った。総降水量は胆振支庁の多い所で80〜120ミリ。5〜6日は千島付近に中心を持つ高気圧に覆われ概ね晴れたが、海岸部では曇りや霧となった所があった。7日は高気圧の張り出しで晴れた所があったが、気圧の谷の接近で南西部では曇りで夕方から雨が降り出した。8〜9日は低気圧の影響で全道的に雨や霧雨が降った。10日はオホーツク海高気圧の影響で曇って海岸部は霧や霧雨となったが、日本海側や南西部では晴れた所があった。

中旬:11日はオホーツク海高気圧の影響で曇って海岸部は霧や霧雨となったが、日本海側や南西部では晴れた所があった。また、夜からは低気圧が接近し南西部から雨が降り出した。12〜15日は寒冷前線や動きの遅い低気圧の影響で雨が降り、太平洋側西部や空知支庁では記録的な大雨となった。このため土砂崩れや冠水等の被害が発生した。総降水量は、空知・胆振・日高支庁の多い所で160〜210ミリ、日降水量は登別市カルルス137ミリ(12日)、長沼114ミリ(13日)、平取町朝日104ミリ(14日)等。16日は高気圧の圏内で太平洋側は概ね晴れたが、その他は曇りで霧や霧雨の所があった。17〜19日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、海岸部では曇りや霧の所があった。また、19日は内陸部で今年初めての夏日となり、日最高気温は旭川26.2℃、札幌25.7℃等。20日は大気の状態が不安定で曇りの所が多く、内陸では雷雨となった。また、オホーツク海側や太平洋側では霧や霧雨の所があった。

下旬:21日は太平洋側では曇りで雨や霧雨の降った所があったが、その他は高気圧の圏内で概ね晴れた。また、内陸では雷雨となった。22〜23日は初め東部で晴れたが、気圧の谷が通過し全道的に曇って所々で雨が降った。通過後は概ね晴れた。24日は上空の寒気の影響で大気の状態が不安定となり、曇りや雨の所が多かった。25日は北部は気圧の谷の影響で曇り、その他は概ね晴れたが、太平洋側やオホーツク海側の海岸部では霧となった。26日は気圧の谷の影響で渡島半島を除いて曇った。27日は初め南西部を除いて晴れたが、低気圧が接近し昼過ぎから曇って、一部で雨が降った。また、26〜27日は内陸部を中心に気温が上がり、日最高気温は帯広28.8℃(26日)、釧路25.5℃(27日)を記録するなど各地で夏日となった。28〜29日は発達した低気圧が通過して全道的に荒れた天気となり、函館で強風による被害が発生した。総降水量は桧山支庁や太平洋側の多い所で50〜70ミリ。30〜31日は高気圧の張り出しで晴れたが、31日昼前からは気圧の谷の接近で雲が広がり、太平洋側で雷雨となった所があった。


気候表
  気温偏差 階級 降水比 階級 日照比 階級
北海道22地点平均 +1.1 やや高 114% 73% かなり少
太平洋側8地点平均 +1.1 やや高 136% やや多 66% かなり少
オホーツク海側4地点平均 -0.4 69% やや少 83% やや少
日本海側10地点平均 +1.7 かなり高 115% やや多 75% かなり少
(札幌管区気象台技術部 気候・調査課 平成12年6月1日 発表)

II.病害虫発生概況

A.水稲

1.育苗期の病害

2.ヒメトビウンカ    発生期  並   発生量  やや多
黄色水盤による第1回成虫の捕殺始めは大野町で5月24日(平年:5月22日)、岩見沢市で6月1半旬(平年:6月1半旬)、比布町で5月4半旬(平年:5月4半旬)と平年並であった。成虫の畦畔でのすくい取り量は各地とも平年より多めに推移している。
畦畔すくい取り成虫数(20回振り×5日間の合計値)
月・半旬 比布町 岩見沢市 大野町
本年 平年 本年 平年 本年 平年
5・I 0.0 1.0 0.0 0.0 0.0 0.0
5・II 0.0 1.3 0.0 4.8 0.7 1.3
5・III 0.0 3.0 0.0 12.6 0.0 12.3
5・IV 0.0 3.3 3.3 88.8 0.0 9.9
5・V 5.0 4.5 40.0 45.3 57.8 22.4
5・VI 30.0 2.7 46.0 14.7 24.0 20.2

3.イネハモグリバエ    発生期  −  発生量  少 
岩見沢市および大野町の予察田では成虫、被害とも確認されなかった。

4.イネミギワバエ    発生期  −  発生量  少
 大野町の予察田では成虫は未確認であるが(平年:6月6日)、産卵始めは5月31日(平年:6月3日)とやや早く、25株当たり産卵数は7個(平年: 1.8個)と多めになっている。全道的には産卵量は平年並の少発生に推移している。
 
5.イネミズゾウムシ    発生期  やや早   発生量  やや多
 大野町の予察田では5月6半旬(平年6月3半旬)より越冬世代成虫による食害が認められ、比布町でも5月6半旬より認められている。
 
6.イネドロオイムシ    発生期  やや早   発生量  やや多
 越冬世代成虫の活動開始は大野町で5月6半旬(平年:6月1半旬)で、岩見沢市、比布町でも5月6半旬と各地とも平年より早まった。岩見沢市、比布町の予察田ではすでに産卵が認められている。
 
7.フタオビコヤガ    発生期  早   発生量  やや多
 岩見沢市の予察田では5月6半旬に産卵が認められている。

B.秋播き小麦

1.うどんこ病      発生期  遅   発生量  やや多 
各予察ほにおける発生期は、長沼町の「ホクシン」を除いては、いずれも平年より遅かった。発生量は月後半に急増し、平年より多い発生となっている。
普及センターからの報告によると、上川、網走、胆振および十勝支庁管内では、半数近くのほ場で止葉の直下の病葉率が数%〜20%に達していた。石狩および空知支庁管内では、まだ止葉の直下の葉に病斑がほとんど達していない少発生状態である。
うどんこ病 初発期
地点 品種名 初発日 平年数
本年 平年
長沼町
チホクコムギ 5月9日 5月4日 10
ホクシン 5月10日 5月20日 5
訓子府町 チホクコムギ 5月8日 4月29日 10
ホクシン 5月8日 - 0
芽室町 チホクコムギ 5月15日 - 0
ホクシン 5月15日 5月1日 2

うどんこ病 予察ほにおける発生状況
地点 項目 品種名   月・半旬 平年数
4・VI 5・II 5・IV 5・VI
長沼町


チホクコムギ 本年 0.0 1.3 4.9 26.8 10
平年 0.4 3.1 6.8 10.6
ホクシン 本年 0.0 0.1 0.2 04.4 5
平年 0.0 1.0 0.3 00.9




チホクコムギ 本年 0.0 0.05 0.1 3.9 1
平年 0.0 0.0 0.2 0.1
ホクシン 本年 0.0 0.0 0.0 0.04 1
平年 0.0 0.0 0.1 0.04
訓子府町 チホクコムギ 本年 0.0 0.14 0.25 0.64 10
平年 1.7 3.0 3.3 4.0
ホクシン 本年 0.0 0.06 1.5 2.8 0
芽室町 チホクコムギ 本年 0.0 0.0 3.3 4.2 0
ホクシン 本年 0.0 0.0 0.2 0.5 2
平年 0.05 0.04 0.2 0.3


2.赤さび病       発生期  やや遅   発生量  やや少〜並
各予察ほにおける発生期は長沼町の「チホクコムギ」ではやや遅く、芽室町の「ホクシン」で平年より遅かった。訓子府町では未発生である。発生量は長沼町で多めとなっているほかは平年より少なめに推移している。
普及センターからの報告によると、胆振および十勝支庁管内で止葉の直下の病葉率が数%〜20%のほ場が散見された。石狩、空知、上川および網走支庁管内では、まだ止葉直下の葉にまで病斑が達していない。
うどんこ病 初発期
地点 品種名 初発日 平年数
本年 平年
長沼町
チホクコムギ 5月17日 5月12日 10
ホクシン 5月7日 5月10日 5
訓子府町 赤銹不知1号 - 6月8日 10
チホクコムギ - 7月1日 10
ホクシン - - 0
芽室町 チホクコムギ 5月15日 - 0
ホクシン 5月15日 5月1日 1

うどんこ病 予察ほにおける発生状況
地点 項目 品種名   月・半旬 平年数
4・VI 5・II 5・IV 5・VI
長沼町


チホクコムギ 本年 0 0 0.3 3.1 10
平年 0.1 0.2 0.8 1.2
ホクシン 本年 0 0.4 3.2 8.7 5
平年 0.3 0.1 1.2 3.6




チホクコムギ 本年 0 0 0.01 0.02 1
平年 0 0 0 0.01
ホクシン 本年 0 0.01 0.02 0.07 1
平年 0.07 0.04 0.08 0.13
訓子府町 赤銹不知1号 本年 0 0 0 0 10
平年 0.0 0.01 0.01 0.1
チホクコムギ 本年 0 0 0 0 10
平年 0 0 0 0.0
ホクシン 本年 0.0 0 0 0 0
芽室町 チホクコムギ 本年 0.0 0.0 0.02 0 0
ホクシン 本年 0.0 0.0 0.02 0 1
平年 0.03 0.01 0.03 0.16

C.てんさい

1.テンサイトビハムシ  発生期  並  発生量  やや多
長沼町の予察ほにおける越冬世代成虫のほ場への移動は5月4半旬頃から認められ平年より1半旬遅かった。各予察ほにおける被害程度は平年より多めに推移している。

月・半旬 長沼町 芽室町 訓子府町
本年 平年 本年 平年 本年 平年
5・I - - - 00.2 - -
5・II - 00 01 00.6 - -
5・III - 01.9 03 02.6 - -
5・IV 05 02.5 12 06.5 03.5 03.8
5・V 23 05.0 15 10.0 15.0 10.3
5・VI 31 10.1 23 15.2 27.5 08.5

D.りんご

1.モニリア病      発生期:葉腐れ  やや早   発生量  並
                   花腐れ   並
長沼町の予察園における発生期は、葉腐れで平年よりやや早かったが、花腐れは平年並だった。
普及センターからの報告によると園地が乾かず多発が心配された(4月26日付け注意報第3号)が、適切な防除と下旬からの天候の回復により発生量は平年並に抑えられた。
モニリア病 初発期
地点 品種名 発病部位 初発日 平年数
長沼町 ハックナイン 葉腐れ 本年 5月17日 1
平年 5月20日
花腐れ 本年 5月21日 1
平年 5月20日

モニリア病 予察園における発生状況
地点 品種名 発病部位 発病花葉そう率(%) 平年数
月半旬
5・I 5・II 5・III 5・IV 5・V 5・VI
長沼町 ハックナイン 葉腐れ 本年 0 0 0.04 0.21 0.31 0.28 1
平年 0 0 0 0.15 0.21 0.18
花腐れ 本年 0 0 0 0 0.45 0.92 1
平年 0 0 0 0.015 0.20 0.60

2.黒星病        発生期  早   発生量 やや多
長沼町の予察園における初発期は「ふじ」では5月24日(平年:5月30日)、「スターキング・デリシャス」では5月24日(平年:6月2日)で平年より早かった。発生量は現在のところ平年より多めに推移している。一般園では未発生である。
黒星病 予察園における発生状況
地点 品種名 初発日 病葉率
5.V 5.VI
長沼町 ふじ 本年 5月24日 2.2 1.3
平年 5月30日 0 0.3
スターキング・
デリシャス
本年 5月24日 2.5 4.5
平年 6月2日 2.3 0.9

3.ハマキムシ類     発生期  遅   発生量   並
長沼町の予察園における越冬卵のふ化始期は遅く、ふ化盛期は5月20日(平年:5月16日)とやや遅くなった。一般園での開花直前の花そう被害は平年並の少発生となっている。

4.ハダニ類       発生期  やや遅   発生量  並
長沼町の予察園におけるリンゴハダニのふ化始期はやや遅かったものの、ふ化盛期は5月17日(平年:5月17日)と平年並となった。現在のところ一般園での発生量は平年並に推移している。

5.キンモンホソガ    発生期  遅   発生量   やや少
 長沼町の予察園におけるフェロモントラップによる誘殺初めは5月2半旬(平年:5月28日)で早かった。しかし、誘殺量は平年より少ない。


E.あぶらな科野菜

1.コナガ        発生期  遅   発生量 やや少  
 長沼町の予察園におけるフェロモントラップによる誘殺初めは5月6半旬(平年:5月2半旬)で平年より遅かった。誘殺量は平年よりやや少ない。
フェロモントラップによるコナガ雄成虫誘殺数
月・半旬 長沼町 大野町 訓子府町 芽室町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
5・I 1 4 3 3 0 4 0.0 1
5・II 8 11 3 4 6 6 2.0 11
5・III 44 12 5 8 3 13 1.0 17
5・IV 27 18 13 28 14 22 10.0 14
5・V 15 42 40 54 11 45 17.5 25
5・VI 72 46 55 77 51 80 50.5 50

F.飛来性昆虫

1.アワヨトウ  発生期  早  発生量  やや多
アワヨトウは飛来性の害虫で本道で多発することはまれであるが、5月下旬に大野町で飛来が確認された。青森でも5月6半旬にかなりの飛来が糖蜜トラップで確認されており、今後特に日本海側では発生動向に注意が必要と考えられる。
予察灯による誘殺数(大野町)
  本年 平年
誘殺数  雄   雌   計   合計 
5月25日   1 1 0
26日      
27日   1 1
28日     0
29日 1 1 2
30日   1 1
31日 1 4 5
6月1日 1   1 0
2日 1   1
3日     0
4日     0
5日     0

お詫び
アワヨトウの飛来状況は6月9日に発表されていましたが、HP版「5月月報」においてはデータが欠落しておりました。
関係者の皆様には深くお詫び申し上げます(担当者)。


病害虫発生予察情報一覧へ戻る
ホームページへ戻る