北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成2年度新発生病害虫]

にんにくのイモグサレセンチュウ(新発生)

(1990年−平成2年)


 渡島管内知内町で平成元年秋期に植え付けたニンニクが生育中期(平成2年4月)から生育不良となり、鱗球内部が褐変する被害が発生した。被害の甚だしい株は生育初期に枯死したが、枯死に至らなかった株では鱗球の肥大期ころ(6月下旬ころ)から葉は下葉から黄化し、鱗球は茎盤部付近から褐変し、症状が進むと鱗片貯蔵葉もスポンジ状となり腐敗した。
 腐敗した鱗球から多数の線虫が検出され、形態調査の結果、側帯溝数6本、尾端がわずかに丸みをおびるなどの特徴からイモグサレセンチュウ(Ditylenchus destructor Thorne)と同定された。
 本種によるニンニクの被害については青森県(1984)の報告がわが国で最初である。 道内における本種の被害は球根アイリスで報告(三枝ほか、1977)されているが、球根アイリスから分離された線虫はニンニクに寄生しないとされ、今回の線虫とは系統を異にするとも考えられる。また、これより古く、1961年に札幌市米里のゴボウ圃場から検出(一戸  稔氏 同定)されているが、ゴボウに病原性のないことを確認したのみで、他作物への寄生性等は調べられていない。
 道内における現在までのニンニクの被害は渡島管内知内町の28a(2圃場)、十勝管内帯広市北愛国の30a(収穫時の腐敗球約15%)、網走管内佐呂間町の30a(1農家)で確認されている。
 今回被害の発生した圃場の種球はいずれも青森県から導入されており、本線虫もこの種球とともに侵入したものと推察される。
 ニンニクに寄生する本種の他作物への寄生性は調べておらず、早急に寄主範囲を確認する必要が認められるが、従来の報告では本種の重要な寄主作物として馬鈴しょ、てん菜、ニンジンなどが知られ、とくに欧米では potato rot nematode として馬鈴しょの重要害虫とされており、今後、種球の導入などに慎重な対応が必要と考えられる。

(道南・十勝・北見・中央農試)


新発生病害虫一覧へ戻る
ホームページへ戻る