北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成2年度新発生病害虫]

水稲の苗立枯細菌病(新発生)

(1990年−平成2年)


 平成2年5月空知支庁管内で、育苗中の水稲に細菌性とみられる病害が多発した。病徴は本葉第2葉が葉身基部から黄白化し、抽出中の心葉は萎凋する。のちに株全体が水分不足で萎れたようになり、葉は赤褐色を呈して葉脈と平行に巻いて針状に立ち、乾燥枯死する。早期に発病した苗は、地上部および根の生育が悪い。しかし、芯は腐敗せず引き抜けることはない。移植後の発病苗は本田で枯死し、欠株となる。欠株にならないものも著しく分げつが抑制される。
 本病は極めて伝染しやすいものとみられ、発病が育苗箱全体に及ぶことがほとんどである。従って、ハウスごと苗を放棄した事例を含め被害は極めて大きい。このため、現場では苗不足も生じるなど深刻な問題となった。被害育苗箱数は管内で26,560箱に及んだ。本病は昭和62年ころから各地でみられ、これまで空知支庁管内を中心に石狩、上川、留萌支庁管内の16市町村で発生が認められている。
 発病苗からはPPGA培地上で淡黄色を帯びた乳白色集落を形成し、培地中に赤褐色色素を産生する細菌が分離された。分離細菌を種籾に浸漬接種し育苗箱に播種すると、病徴が再現された。分離細菌は、極鞭毛を有し、グラム陰性、OF試験はO、蛍光色素を産生せず、40℃で生育しない。アルギニン水解は陰性、オキシダーゼ活性および脱窒は陽性、PHBを集積し、L−ラムノース、シトラコン酸塩、L−酒石酸塩、ニコチン酸塩、D−アラビノーズ、トレハロースの利用し、アドニトール、βアラニン、ラフィノース、ラクトース、安息香酸塩、レブリン酸塩を利用しなかった。本細菌の性質は、トレハロースの利用能を除いて、Pseudomonas plantarii (畦上ら1985)と一致した。また畦上ら(1985)の本菌識別培地で、赤褐色の結晶の析出を認めた。従って、本病原細菌は Pseudomonas plantarii Azegami、Nisiyama、Watanabe、Kadota、Ouchi、et Fukuzawa と同定された。

(中央農試)


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