北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成元年9月、根室支庁管内で別海町を主として20haを超えるチモシーの採草地にヤガ科の幼虫が多発し、葉が食害される被害が認められた。多発ほ場では幼虫の密度が1m2当り50〜100頭にも及びオーチャードグラスのほかクサヨシ及びササなどの食害もみられた。
本種の幼虫は体に長毛を有するが、その毛束の配列や斑紋を Hofmann(1893)などの図版、記載と照合するとSimyra albovenosa Goezeに一致したことから、タテスジケンモンと同定した。
なお、根室地方では9月中に幼虫がみられ、イネ科草本を食害したのち、蛹越冬するが、これは欧州における生態的知見とも合致している。日本では古くは札幌市、幕別町で、近年では標茶町、標津町、中標津町、根室市及び青森県下北半島から散発的に成虫が得られている。本種は湿原草地に生息する年2化性の種類といわれ、道東部では成虫の発生は5月と8月に認められている。
終令幼虫は、体長が40mm、頭幅は3.5mmである。太い黄白色の亜背線と気門下線及び黄褐色の毛束瘤が目立つが、その他の部分は黒地に細かい黄白の曲線が混じっている。刺毛は白、黒が混在し、気門は黄白色である。頭殻は黒いが、副前頭、頭頂、頬など黄色い部分があり虎縞もようとなっている。