北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成元年度新発生病害虫]

コムギのスッポヌケ症(仮称)

(1989年−平成元年)


 1987年4月、網走管内白滝村、訓子府町で融雪後中心葉が先端より枯れはじめる症状が多発した。これらの個体の中心葉基部は軟腐症状を呈する。このため中心葉は引っ張ると容易に抜けてくるが、株全体が抜けることは稀である。また激しく発病した場合には地際の葉梢まで褐変し、しばしば平滑で形状の不規則な菌核が見られた。
 本症状個体および菌核から分離された糸状菌のうち病原性を認めたのは、いずれも担子菌であった。本菌の菌叢はPDA上ではじめ白色、マット状、周囲は放射状を呈し、菌糸幅は2.0〜4.9μm、培養を続けると菌糸は褐色を帯び、形状の不規則な菌核を形成する。本菌は好低温性で、生育適温は10゚C前後、低温域では−5゚Cでも菌糸伸長が見られるが、25゚Cでは生育しなかった。
 また、Typhula ishikariensis.T.incarnata のmonokaryonとの交配は認められなかった。現在のところ子実体を形成しないことから分類学的所属は不明であるが、本菌は病微、菌核の形態及び Di-mon 交配の結果から、雪腐黒色および褐色小粒菌核病菌とは異となる低温性坦子菌であると考えられる。
 なお本症状は十数年前より網走管内を中心に発生が認められており、スッポヌケ症と呼ばれているが、地域によっては既知の雪腐病以外の枯死症状を総称的にスッポヌケ症としている場合もあるので、今後類別が必要と思われる。

(北見農試)


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