北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
昭和63年8月、長沼町および南幌町のグラジオラスにアザミウマの一種が展葉した葉、蕾および花部に多数寄生し加害しているのが認められた。本種を横浜植物防疫所に同定依頼した結果、侵入害虫であるグラジオラスアザミウマ(Thrips simplex MORISON)であることが確認された。
被害症状は茎葉の場合、緑色部分が不整形に白斑化し、条斑や斑紋を生じて縮れ、激しい場合には褐変枯死する。花の被害は開花初期から花弁に白色斑点を生じ、開花が進むと花の先端からしおれ、症状の甚だしいものは蕾のまま出すくみとなり開花しなくなる。とくに、赤や赤紫色の有色系品種では被害が目立ち、商品価値が著しく低下する。
本種はヨーロッパをはじめ北・中・南アメリカなどに広く分布しており、グラジオラスのほかカーネーション、ダリア、アイリス、フリージア、バラ、カンナなどの花き類に寄生し加害する。
わが国では昭和61年に茨城、静岡および奈良県のグラジオラスで初めて発見され、その後、秋田、栃木などでも確認されるなど現在までに14府県、35市町村で発生が認められている。
府県の調査によると本種は秋に地表近くや球根上に移動し、堀り上げられた球根に付着して貯蔵庫に運ばれ、春に球根とともに圃場に持ち込まれるとされていることから、今後、道内でも発生分布が拡大する恐れがあるので充分に警戒する必要がある。