北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
昭和63年5月に仁木町・余市町のオウトウ園においてケバエ類の一種が大量に飛来し、開花中のオウトウ樹に群がり、吸蜜した。発生量の多い場所では一つの花に数頭もが潜り込んで吸蜜していた。
蜜を吸われた後の花を分解して調べると、花梗、柱頭および子房部に引っかき傷がついており、その影響が懸念された。
6月の果実肥大後に行った調査では果実表面に引っかき傷が淡褐色に残り、一部は傷が原因となって奇形果になるなど著しく商品価値を損なう被害に結びついた。被害果率は園地の場所や樹によって異なるが、最も多かった仁木町の山沿いの園では30〜80%にのぼった。
同様の発生と被害が旭川市、深川市、増毛町のオウトウ園でも見られ、さらに果樹園のない旭川市永山や富良野市でもビニール・ハウスの周囲に飛来するなど、道央以西の広い範囲にわたって本虫の異常な大量発生があったと考えられた。
笹川満廣氏(京都府立大)に同定を依頼し、Bibio
deceptus HARDY et TAKAHASHIであることが判明した。本種はまだ和名がついていないため、同氏によりフタバアシブトケバエと呼称するように提案を受けた。雌雄とも体長5.5mm前後、翅長5.0mmで全体に黒色を帯び、脚はいずれも長く、前脚に鋭い爪を持つ。北海道・本州に分布するとされているが、その生態や生活史についてはほとんど不明である。