北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
昭和62年10月、新得町のニンジン共選場で微小な黒斑症状を示すニンジンが多くみられ、それらは出荷作業中に病徴の進展により表面全体が黒いすす状となって腐敗した。約80haより集荷されたニンジンの約20%に発生が認められた。本年は7〜8月にかけて多雨に経過したが、本病の発生は特に排水不良畑産で目立った。罹病部からPDA培地上で緑色の菌そうを示す糸状菌が分離され、ニンジンに対する有傷接種で同じ病徴が再現された。本菌は分生胞子および厚膜胞子を形成する。
分生胞子は無色〜淡緑色、円筒形、分生胞子柄中に内生され、二連状あるいは連鎖状に排出される。大きさは直径8.6〜26.8μm、短径2.4〜5.6μmであった。厚膜胞子は球形〜卵形、暗緑色〜黒色で菌糸の先端に形成される。大きさは9.9〜15.8μmであった。また、生育温度は4゚C以上で生育し35゚Cでは生育しない。最適温度は20〜25゚Cであった。
以上の結果から、本菌はChalara thielavioides (Peyronel)Nag Raj et Kendrick(Chalaropsis thielavioides )と同定された。本病は本邦未発生の病害であるので、病名をニンジン黒すす病としたい。なお、昭和62年11月に富良野市で輸送中のニンジンに発生が認められた。