北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

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平成24年度に特に注意を要する病害虫

てんさいの褐斑病

トマト並びにミニトマトの葉かび病


(1)てんさいの褐斑病

 平成23年は、てんさいの褐斑病が主産地の十勝、オホーツク地域を中心に多発し、現況調査結果によると発生面積率は59.7%(平年31.8%)、被害面積率は19.5%(平年5.7%)で、平成22年(発生面積率80.5%、被害面積率33.6%)に引き続き2年連続の多発生となった。

 平成23年は初発がやや早く、7月の気温は高めで、上旬から中旬にかけて定期的な降雨があり本病の発生に好適な条件となった。その後、7月下旬から8月上旬は干ばつ気味に推移したため発生は一時的に抑制されたが、8月中旬以降は高温多雨に経過し急激にまん延した。また、9月の大雨によりその後しばらく防除作業に入れず、多発に至った例もあった。

 褐斑病の初発は気象条件によって大きく変動し、早い年には6月下旬頃から、遅い年には7月下旬以降となる。しかし、感染源密度が高い場合には初発は早まる傾向にあるので、平成23年に多発した地域では注意が必要である。また、本病菌の胞子形成や発芽は1729℃で認められ、85%以上の湿度を必要とするが、6月でも最低気温が比較的高く雨が多い場合は初発するため、このような年には薬剤防除が遅れる危険性がある。このため、農業試験場の予察定点における初発の情報などに注意し、自らもほ場観察を実施して、初期の散布タイミングを失しないことが重要である。さらに降雨が続くと、畑のぬかるみや作業競合のため、長期間防除に入れない事態も発生する。薬剤の散布間隔は極端に開くと十分な防除効果が得られないことから、気象情報に注意して防除のタイミングが遅れないように注意する。また、近年は9月以降も高温が続き、本病発生に好適な条件が続く年が多い。9月中に成葉の大半に病斑が認められ大型病斑も混在するようになると減収するおそれがあるので、秋季の高温傾向が予想される場合は、9月下旬まで薬剤散布の要否を見定めて適切な防除を実施する必要がある。なお、平成23年のような多発年でも抵抗性品種作付圃場では被害を免れた事例もあることから、本病対策として抵抗性品種の導入に努める。

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写真 てんさい褐斑病の症状(中央農試 清水 原図)

(2)トマトならびにミニトマトの葉かび病

 トマトならびにミニトマトの葉かび病に対する防除法として、抵抗性品種の導入が進められており、YES!clean登録集団などにおいても減農薬あるいは無農薬栽培の手段として本病の抵抗性品種が広く用いられている。しかし、平成19年に抵抗性遺伝子Cf-4 を持つ品種を侵すレースが発生し、Cf-9 を持つ品種を導入することで対応できたが、さらに、平成21年にはCf-9 を持つ品種を侵すレースが確認され、現在では、Cf-9 を持つ、あるいは付与されていると思われるトマト6品種ならびにミニトマト3品種で葉かび病の発生が確認され、問題となっている。Cf-9 を侵す新レース(以下、新レース)の発生が認められている地域は、石狩、後志、渡島、上川および留萌地方であり、新レースの種類としてレース2.9、レース4.9、レース4.9.11が道外で報告されているが、道内での詳細は不明である。

 道外ではCf-9 をもっている品種の導入からわずかな年数で新レースが出現し、まん延していることから、本道でも新レースのまん延が懸念される。現在、新レースに抵抗性を示す市販品種はない。このため、葉かび病抵抗性とされる品種を栽培しているほ場のうち、本病の発生を確認していないほ場でも、本病の発生に注意する必要がある。抵抗性品種でも発生を確認した場合には農薬による防除が必要となるが、本病に対しては初期防除の徹底が特に重要であるため、ほ場観察を励行し、薬剤防除のタイミングが遅れないようにする。さらに、多湿にならないよう換気に努め、肥料切れに注意し、初発時から罹病葉の除去を徹底するとともに、薬剤散布に当たっては葉裏にも薬液が十分かかるよう留意する。なお、新レースが発生した場合でも、トマトでは平成20年指導参考事項「トマトの病害虫に対する生物農薬を活用した減化学農薬防除技術」を参考に、減農薬栽培に取り組むことが可能である。

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写真 トマト葉かび病の症状(花・野菜技術センター 野津 原図)



過年度の特に注意を要する病害虫


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