北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成13年度に特に注意を要する病害虫
(1)水稲のアカヒゲホソミドリカスミカメ
本年は昨年の多発生を反映して、イネ科雑草地における第1回目の発生量が多くなった。その後も高温で経過したことから、水田に飛来する第2回成虫の発生量も多めとなったが、昨年のような異常高温(特に夜温)とはならなかったことから、誘殺数、水田内すくい取り数は昨年よりは少なくなった。また昨年同様、一部水田では幼虫の発生も認められた。
これに対し、本年は生産者、各関係組織が一丸となって対策に取り組み、カメムシのすくい取り調査と防除体制を強化した結果、斑点米の発生は最小限に抑えられた。
本年夏から秋にかけて高温で経過し、秋の成虫発生量が多く産卵量が多いと予想されることから、平成13年の春には雑草地等での第1回目の発生量が多くなると見込まれる。このため、本年同様、雑草の刈取りに努めるとともに定期的にすくい取りを行い、発生状況に応じた適切な薬剤散布に努めることが肝要である。
(2)イネ科作物のアワヨトウ(中国大陸からの飛来性昆虫)
本年5月下旬から6月上旬にかけて成虫の飛来が確認されたことから東北北部地方の飛来状況も勘案して注意報を発表した。幼虫による被害は6月中旬より石狩、渡島、桧山、後志、空知、上川、留萌および宗谷支庁管内で発生した。被害は主にイネ科牧草で発生し、麦類、とうもろこしなどでも点々と認められた。
被害は日本海側の牧草地が主体であったが、注意報等に基づき適切な薬剤散布が実施されたことから被害は軽微なものとなった。
6月以降の高温乾燥傾向が、産卵・幼虫生存の好適条件となったらしく、高密度条件で生じる黒色型の幼虫も認められた。
今後とも、道南地方・東北北部の成虫飛来状況に基づいて注意報を出す予定であるが、その場合、特に日本海側の地域ではイネ科作物ほ場ですくい取りを行い、黒色型幼虫が見つかれば防除体制をとるべきと考えられる。
(3)小麦の縞萎縮病
北海道では平成3年に発生が確認され、その後平成8年頃から発生地域が徐々に拡大している。本年新たに8市町村で確認されたため、本病は現在7支庁27市町村で発生し、道央地帯を中心に被害が目立っている。
近年発生が目立ってきた原因として、主要品種が本病に弱い「ホクシン」に置き換わったこと、連作または短期輪作が行われていることがあげられる。
病原ウイルスは糸状菌により土壌伝染するため、ほ場管理作業は常に発病ほ場を最後にし、作業後は機械等を良く洗浄することにより、病土を健全ほ場に持ち込まないことが最も重要である。また、ほ場の排水を良くし、媒介菌のほ場内での移動を防止することも大切である。病原ウイルスを保毒した媒介菌は、小麦が作付けされなくても8年以上土壌中で生存できるとされていることから、連作は避け、発生ほ場では作付けをせず、やむを得ない場合は品種の選択に注意する必要がある。
(4)オキソリニック酸水和剤に対するばれいしょの軟腐病菌の感受性低下
平成12年8月十勝支庁管内の一部でオキソリニック酸水和剤を数回茎葉散布したほ場で、ばれいしょの軟腐病が多発した。そのため、オキソリニック酸水和剤に対する軟腐病菌の感受性検定が依頼された。このような軟腐病多発ほ場から採取した罹病ばれいしょ個体から21菌株の病原細菌を分離し、オキソリニック酸水和剤の感受性を検定した。その結果、すべての供試菌株で、オキソリニック酸に対する感受性の低下が確認された。しかし、その程度は低いもので、現状では耐性菌と呼べるものではない。したがって、今回明らかになったわずかな感受性の低下によってほ場における防除効果が低減するかどうかは不明である。今後、地域を拡大して調査する必要があるが、薬剤防除に当たっては、同一系統の薬剤の連用を避け、ローテーション散布に努めることが、感受性のさらなる低下を防止するうえからも重要である。
(5)てんさいのヨトウガ
本年は、第1回成虫、第2回成虫とも発生がやや早く、幼虫による被害も多くなった。
この原因として、5月以降の高温経過から、第1、第2回成虫の発生期がやや早まり、成虫の産卵に伴う幼虫の発育も高温・好天経過により順調になったためと考えられる。
従って発生の多かった地域では幼虫による被害推移に注意を払い、適正な防除に努める必要がある。
なお、てんさいのヨトウガに対する薬剤散布開始期は被害株率50%前後の時であり、通常この時点での1回防除で済むが、幼虫による被害がさらに進展する場合には追加散布を行う必要がある。
(6)トマトのかいよう病・青枯病
ハウス栽培トマトのかいよう病が後志、空知、上川、日高支庁管内で、青枯病が渡島支庁管内で発生した。空知支庁管内では一部に青枯病の発生も見られた。後志支庁管内では7月下旬より抑制栽培作型で、空知支庁管内では6月上旬より促成・抑制両作型で発生した。渡島支庁管内では7月中旬に初発が認められ、その後被害が増大した。類似の症状は2〜3年前から見られていたという。品種は主として「ハウス桃太郎」であった。
本年のかいよう病の病徴は、土壌伝染による全身の萎ちょう症状が特徴であった。本年はトマトの生育期を通して高温に経過したため、両病害の発生に好適であったと考えられる。
かいよう病は種子伝染が認められていることから、温湯浸漬などによる種子消毒と茎葉散布を実施する。青枯病では抵抗性品種・台木の利用が可能である。両病害とも土壌伝染し、傷口や根から感染する。かいよう病菌は土壌中で2〜3年、青枯病菌は通常2〜3年、条件によってはさらに長期間生存可能であるため、発病ほ場では作付けを控え、さらに土壌消毒などにより菌密度を低下させることが重要である。また、管理作業でも伝染するため、発病株は見つけ次第除去し、摘芽・摘心などの作業は乾燥時に行い、ほ場排水にも努める。
なお、青枯病は多くの植物を侵すため、発病ほ場での栽培作物の選択に注意する。
(7)各種作物の本州方面からの飛来害虫
本年は昨年と同様に高温で経過したことから、北海道では通常多発しない暖地性害虫が、道南・道央地域で7月以降に認められた。これは全国的に高温経過であったことから本州以南で世代を繰り返した後に一部成虫が飛来し、北海道でも成育できる温度条件等があったため、被害になったものと考えられる。
このような害虫として、ハスモンヨトウ、オオタバコガ、ウリキンウワバ、マメノメイガ、ワタヘリクロノメイガ(ウリノメイガ)、コブノメイガ、ナガイモコガがあり、常発化しているコナガ、ネギコガなどもこれらに含まれると思われる。本州以南で数世代を経てから北上してくる害虫にあっては、各種薬剤に対して抵抗性を持つものがある。従って、高温年に見慣れぬ害虫を見つけた場合には各普及センター、試験場に依頼して加害虫を特定するとともに、使用薬剤について注意の必要がある。
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