平成15623
北海道病害虫防除所発行

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 発生予察情報第7号   特殊報第1

各種野菜・花き類に「アシグロハモグリバエ」が新発生
ハモグリバエ被害に注意を

 

胆振支庁管内のハウス栽培のほうれんそうや花き類で、これまで国内で未確認だったアシグロハモグリバエ(仮称)Liriomyza huidobrensis (Blanchard)の発生が確認された。本種は南アメリカ原産で、1990年代以降世界中に分布を拡大し、温暖地では各種の農作物に被害を及ぼしている。道内で既発生の近縁種ナスハモグリバエと同様に多くの作物に寄生できることから、今後の発生拡大に注意を要する。

1.発生の経過

平成139月、胆振支庁管内のほうれんそう・花き栽培ハウス等においてハモグリバエによる被害が発生し、花・野菜技術センターに診断依頼があった。その後、平成154月に、これと同一と思われる種の発生が同管内他地点の花き栽培ハウスにおいて確認された。発生種について横浜植物防疫所において遺伝子型診断を含め検討したところ、本種は日本では未発生のLiriomyza huidobrensis であることが確認された。本種の侵入した経路・年次は明らかではないが、上記の発生地では国内外から花き類の苗を導入していることから、これらの苗に付着して侵入した可能性も考えられる。

2.形態

1.     成虫:体長は約2mm。頭部、胸部側面・脚の一部は黄色で、胸部背面は黒色である。 これらの外観は、道内で常発している農業害虫ナスハモグリバエと類似する。

2.     幼虫:老熟幼虫は体長3mm程度の小さなウジで、体色は乳白色である。後部気門には69個の気門小瘤がある。

3.     類似種との識別:成虫の色彩は、同属で広食性のナスハモグリバエなどと類似しており、肉眼による判別は困難である。ただし、胸部側面の黒色斑が大きく脚も黒ずむ点は特徴的である。なお、本種やナスハモグリバエは葉外に脱出して蛹化するが、道内で各種作物に普遍的に発生するナモグリバエだけは葉の中で蛹化する。

 

3.発生生態、被害

1.     本種は非常に多くの作物に寄生・加害する広食性害虫である。これまでに道内の発生地で寄生が確認された植物は以下のとおりである。野菜類では、トマト(*)、かぼちゃ、あじうり(まくわうり)、パプリカ、セロリー、ほうれんそう、花き類ではプチアスター(*)、マリーゴールド、きく、シュッコンカスミソウ(*)、カーネーション、ナスタチウム、カンパニュラ、トルコギキョウ、千日紅、雑草ではシロザ、ナギナタコウジュ(高密度の寄生を認めたものに"(*)"を付した)。

2.     幼虫は葉の組織内に細い線状の潜り跡(潜葉痕)を形成する。幼虫齢期が進むと線状潜葉痕は太くなるが、これは葉脈沿いに多くなる傾向がある。老熟幼虫は葉外に脱出して土中で蛹化する。

3.     本種の1世代に要する発育期間は20℃23日、25℃16日程度と比較的短かいため、ハウス内では急速に高密度となることがある。休眠性は認められず、冬期間の低温には耐性が低い傾向がある。

 

4.対  策

発生地における事例調査などから、以下の点が当面の対策として参考になると考えられる。

1.     本害虫には農薬登録された薬剤はないが、エマメクチン安息香酸塩乳剤、カルタップ水溶剤、シロマジン液剤は、海外および国内で本種や類似種に効果が認められていることから、密度を抑制できる見込みが高い。これらの薬剤の登録内容については別表を参照。
なお、各薬剤を散布する際には、作物に適用のある薬剤を使用し、希釈倍数、総使用回数など使用方法等を遵守する。

2.     春期の発生地調査では、無加温ハウスで少数ながら越冬個体を確認できる。 初夏にはこのようなハウスや加温ハウスから多発し始めるので注意する。

3.     冬期間にビニールを除去したハウスでは、越冬を確認できない。したがって、本種は本道の露地では越冬が困難と考えられる。夏期に34週間程度ハウスを密閉して「蒸しこみ」とすることでハウス内の本害虫をほぼ絶滅できる。いずれの方法も、本種の密度低下に有効と思われる。

4.     黄色粘着板トラップにより成虫の発生時期や量をモニタリング、あるいは作物などにおける成虫の食痕・産卵痕()の発生動向に気をつけて、低密度のうちから薬剤防除を行えば多発状態とはならない。 (注:成虫の食痕・産卵痕:上中位葉の表面に作られる径1mm弱の小白斑群)

 

5.その他

現在のところ、道内で本種の発生を確認している地域はごく一部である。今後、生息地域の拡大があるとすると、その多くは寄生苗の移動によるものと推測される。そのため、新たに苗を導入する場合には、ハモグリバエ類の食痕・産卵痕がないことを確認の上、定植を行うようにする。加えて、以下のような状況が認められる場合には、農業改良普及センターや病害虫防除所・農業試験場に連絡し、早期に発生した害虫種を特定することが望ましい。

1.     野菜・花き類で、防除を実施したにもかかわらずハモグリバエによる被害が目立つ場合。

2.     潜葉痕が葉脈沿いに見られた場合、特に被害植物が他のハモグリバエによる寄生例の少ないカーネーション、ほうれんそう、アスターである場合。

なお、国内の暖地では、本種に類似した広食性種として、共に侵入種で薬剤感受性の低いマメハモグリバエ、トマトハモグリバエの発生が確認されている。いずれも成虫の外観は本種よりナスハモグリバエに似る。他府県から導入した苗にはこれらの種も寄生している可能性がある。

参考:アシグロハモグリバエに効果の期待される散布薬剤の登録内容

薬剤名

対象作物

希釈倍数

使用時期

使用回数

エマメクチン
安息香酸塩乳剤

花き類

1000

-

5回以内

ほうれんそう

2000

3日前

2回以内

トマト・ミニトマト

2000

前日

2回以内

メロン

10002000

前日

2回以内

きゅうり

2000

前日

2回以内

カルタップ水溶剤

ほうれんそう

1000

1週間

2回以内

シロマジン液剤

トマト

1000

前日

3回以内

きく

1000

発生初期

4回以内

 



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